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水晶薔薇庭園館綺譚10 提案書(7月上旬~中旬)

 一番最初にトール師が受けた新しい仕事場がステーションの天使領域だと知った時はさすがにちょっと早まっただろうかと心配した。
 今まで出入りしていたのはそんなに波動の高くない、一般に出入り可能(最も許可が必要な個所もあるが)な共有領域がメインだった。
 時折上の方々との仲介役をやったこともあるが、それも緩衝地帯に臨時の連絡部屋を作ってもらってのことだった。

 そもそも自分が元天使であることは直接は伝えていない。
 しかし下でのやり取りや、下が思い出したことを表現して、さらにそれを読まれている以上把握はしているのだろう。

 でなければいくらこちらが仕事を手伝うといっても、領域に入れず、手伝うこともできないのは分かってたし、やんわり断られれただろう。

 部下の選任を任された時、かつて特に所属を決めずにあちこちを手伝った人脈が役にたち、優秀な人を選任できたことは幸運だった。

 もっともその時に下のイベント参加のため、受けてなかった仕事の手伝いを逆に依頼されたことはさすがに閉口したが。

 実際にトール師の仕事を手伝い始めてみて、その仕事量及び膨大な作業に圧倒された。
 そして前任者が過労で倒れてしまったことにも納得した。
 もちろんどこに問題があるかも総指揮官となったトール師の話からすぐに理解した。

 そちらは自分が手を出せる問題ではないので、こちらはこちらで出来るものから順番にやっていくしかない。
 
 なんとか色々と手筈を整え、仕事も大きな山脈をいくつか越えて、一旦手すきになった時にそれはきた。


「緊急ミーティング?」
「はい、何か総指揮官殿から説明したいということで」
「わかった、こちらからも連絡をする」

 部屋に残っていた部下から心話が届き、了承する旨を伝える。
 他の今外に出払っている部下にも伝え、いつくらいに今とりかかっている仕事がひと段落つくかを確認する。

 そしてミーティング時間をきめて、その時間にミーティングルームに集まった。

「隊長、すみませんがこちらを見ていただきたいのですが」

 ミーティング開始前にいきなり部下の一人であるエルリックが書類の束を持ってきた。
 何かの提案書のようだ。
 最近残業でデスクワークをしていたのはこれのためか。

「わかった。ミーティング後に見せてもらう。すぐ始まるから席に着け」
「はい」

 そう言って部下が席に座る。
 遊撃部隊は自分を含め全部で8人。
 シフト上本来は休みのため、部屋で寝ている2人(さすがにたたき起すのは忍びなかった)を除いて全員が集まった。
 この二人には後から自分が説明することになるだろう。

 そしてトール師の説明が開始される。
 いきなりのミーティングの理由と内容が説明されると、一斉にうめき声に近い感歎とも驚愕とも言えない声が上がる。
 どうやら七夕の日にパートナーである緑の少女がとんでもないことをプレゼンしたようだ。

「本当にそれ、出来るんですか?」
「すごい計画ですね。発動したらすごいことになりそうです」
「つまりこれの推進するのが総指揮官殿ですよね」
「ああ~~~、また仕事が増えるのか~~~」

 そんな中とりあえず沈黙を守る。
 トール総指揮官が自分たちに説明した以上、出来るということであり、その指揮もこの方が執られるのであろう。
 どう考えても発案者であるあの少女が指揮を執るとは(失礼だが)思わない。

「そういうことで、よろしく頼むよ」

 言われた以上、こちらとしてはそれに合わせて受けるしかない。
 ただこの人数と今までのシフトではぎりぎりかパンクするかもしれない。
 もっともそれは遊撃部隊に限らず、技術部及びこの部署全体がてんやわんやになるということだった。

 ようやく余裕が出てきたところにこれではさすがに部下も参ってしまうだろう。
 一度増員(あまりしたくないが)を含めて色々と再検討する必要がありそうだった。
 ふと先ほど渡された書類を思い出し、パラパラとめくる。

 提案書としては最低な文章だった。
 主観でだらだらと書いてあり、結局どこが焦点なのかはっきりしないし、何を伝えたいのが一見して不明だった。

 しかし裏付けの資料はしっかりしており、苦労して読んだ提案内容は理解されるにつれ、なるほどと思うことがある。
 ただ、これでは……。

「なんですか、それ」
「エルリックが持ってきた提案書。資料は悪くないが最低だな」
「どうします」
「……書き直しさせる、どこにいる?」
「今はデスクにいます」

 エルリックのもとに行って要点を分かりやすく書き直しをするよう、そして出来れば半分の枚数にするように伝える。
 それが出来れば提出可能と伝えると、張り切って書き直します、と返事がきた。
 では明日提出、ということで帰宅した。


 目の前にいきなり魚が飛び込んでおどろいて我に帰る。

「エル・フィン、釣れたよ」

 レオンがそう伝える。
 しまった、どうやらぼんやりとしてしまったようだった。
 理由は簡単で、新しいプロジェクトについて思わず色々と思いを巡らしてしまったからだった。

 せっかくちょうど学校から帰ったきたレオンと釣りに出たのに。

「ごめん、少しボーっとしていた」

 素直に謝ると心配そうな顔をする。
 すこし外見が成長したためか以前のようなべったりと甘えるのは少なくなったが、目で訴えかけてくるのは相変わらずだった。

「仕事、相変わらず忙しい?」
「以前ほどじゃないよ。ただ新しいシステムの件で色々とね」

 そうして思わずそもそもセキュリティシステムとはの話の基礎をしてしまう。
 最新の仕事にかかわることは話せないが、どんな事なのかは知っていても損はないだろう。
 そういう話はレオンも楽しいみたいで、目を輝かせて聞いている。
 
「やっぱり、ずーっとエル・フィンに教えてもらいたかったな」

 話がひと段落をすると、ぽつりとレオンはそういった。

「学校行くのも大切だよ」
「わかっているよ、自分で決めたことだし」

 レオンはどちらかというと飲み込みも覚えも早い方だった。
 そんな彼にとっては、学校という一定の速度で進む勉強の仕方は時には飽きてしまうのだろう。
 ふと微笑んで、レオンの額にキスをした。


「書き直し。もう少し要点を絞ってかけるといいんだが」

 そう言うとエルリックが呻いた。

「勘弁してくださいよぉ、3回目ですよ~」
「駄目。上司も時間が有り余っている訳じゃないのは知っているだろう。忙しい人に見せる場合は一読で何を言いたいかをわからせる必要がある。もう少し的を絞れ。ついでに出来れば結論を簡潔に先に書く!」
「ひどい……」
「こんな提案書を読ませられるのもひどい仕打ちだ。OKが出るまで総指揮官に提出しないように」

 通常業務のほかに提案書を出そうとするとどうしても時間内にできずに、残業をする羽目になる。
 それに付き合って結局こちらもデスクワークを手早く片付ける必要に迫られ、時には残業して指導することになる。
 もともと事務処理能力は下が手早い分、こちらも楽させてもらっているが更に処理能力が上がった気がする。

 ついでに部下の報告書に目を通しておく。
 これは?と思うところをチェックしてフロアにいれば呼び出し、外に出ているときは心話で確認する。
 それが終わるとトール師の方へ転送して終了。

 その間にどうにかまとめたようで改めてエルリックが提案書を持ってくる。
 どうやらアドバイスを素直に聞いたようで、格段に読みやすく、分かりやすくなった。
 これなら大丈夫だろう。
 ついでに簡単なチェックをして、そこだけ直すように伝える。

「ここを直したら、総指揮官に提出しておくように。お疲れ様」
 
 そう言うとエルリックはほっとした表情になる。
 こちらも非常勤講師のために学校に行く時間に間に合ったことにホッとして、部屋を出た。


 後日総指揮官からその案が採用されたことを聞かされた。
 

~・~・~・~・~・~

そしてまた再びバタバタ始まる序章、だったりして。

分割しようと思っていたけど、めんどくてやめました。
長くてすみません。

実はこれ、最期の方以外、ほぼリアルで見てました(苦笑)
なのにお持ち帰りできない箇所があったり。
ヘタレだ……。

やー、あの提案書には参りました~、読むのが。
エルリック、ひょっとして下居るのかなぁ?居たとしたら絶対女性だなぁ……、あの書き方。

ちなみにレオン君、この頃だいたい外見12・3歳くらいです。
(今もそれくらいか)
対応もちょっと大人になってきたかな~?


※登場人物に関しましては「水晶薔薇庭園館綺譚について」をご参照ください。

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Comments

リアルでみられるのはすごい!

それにしても、本当にエルリックさんの文はすごいのね?
>エルリック、ひょっとして下居るのかなぁ?居たとしたら絶対女性だなぁ……、あの書き方。
を読んで・・・。
少なくとも、理系の書き方ではないんだろうなぁ・・・。
ダメ出し、お疲れ様でした>エル・フィンさん

これ、さつきのさんの次のお話あたりとリンクするんですよね?
お二人のお話の進展までシンクロしていて、
ますます目が離せません。
Posted at 2009.08.11 (15:19) by wakka○ (URL) | [編集]
> リアルでみられるのはすごい!

いや、たまたま、偶然。

> それにしても、本当にエルリックさんの文はすごいのね?
> >エルリック、ひょっとして下居るのかなぁ?居たとしたら絶対女性だなぁ……、あの書き方。
> を読んで・・・。
> 少なくとも、理系の書き方ではないんだろうなぁ・・・。
> ダメ出し、お疲れ様でした>エル・フィンさん

理系じゃないね~、どう見ても文系。
でも分析は上手かったのでやっぱり理系??

> これ、さつきのさんの次のお話あたりとリンクするんですよね?
> お二人のお話の進展までシンクロしていて、
> ますます目が離せません。

うん、次あたりに出てくる話とシンクロしてます。
で、結果としてデオンさんがトールさんとこに出入りします(←ってネタばらしてどーする私)
どーしてこんなタイミングが合うんだろう……・・。
Posted at 2009.08.11 (17:42) by たか1717 (URL) | [編集]
エルリックさん、コレ読んだら、下の人名乗り出れなくなっちゃいそう(笑)

本当に忙しいんですね~。
って、トールさんもエル・フィンさんも働くの好きそうだから
仕事を引き寄せてるんじゃないですか~?(爆)

レオン
Posted at 2009.08.11 (19:06) by *ひなた* (URL) | [編集]
> エルリックさん、コレ読んだら、下の人名乗り出れなくなっちゃいそう(笑)

大爆
確かにそーかもっ。ごめんなさいっm(_ _)m

> 本当に忙しいんですね~。
> って、トールさんもエル・フィンさんも働くの好きそうだから
> 仕事を引き寄せてるんじゃないですか~?(爆)

そ、それは考えてみなかったです。
トールさんにそれ言ってみますか??
Posted at 2009.08.11 (22:09) by たか1717 (URL) | [編集]
私の上のコメント・・・
どうしてレオンで終わってるんだろう(汗)

何か書こうとしてたんだろうけど、思い出せません(笑)
ごめんなさ~い><
Posted at 2009.08.12 (21:28) by *ひなた* (URL) | [編集]
> 私の上のコメント・・・
> どうしてレオンで終わってるんだろう(汗)

私もしばらく悩みました……。
一体何を書きたかったのでしょう、おねーたん。

> 何か書こうとしてたんだろうけど、思い出せません(笑)
> ごめんなさ~い><

大爆
あるよね~、そう言うこと。
きっと*ひなた*さんでなく、おねーたんが何か書きたかったんだと思います。
Posted at 2009.08.13 (12:09) by たか1717 (URL) | [編集]
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