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水晶薔薇庭園館綺譚6-2 剣指南2(6月上旬)

 昼下がりのクリロズの裏庭に約束通りレオンを連れていった。
 レオンもいることだから、ということで真剣を持っての指導してもらうこととなったが、やはり二人きりの時のような流れにはなりにくかった。

 もちろん得物が違うのもあるが、やはりレオンに剣術を見せたいというのもある。
 それがトール師も分かっているのか、少し目に面白がっているのが見て取れた。
 しばらく指導してもらった後の休憩時間に、トール師はレオンと手合わせを申し出てくれた。

 躊躇して心配そうにでも期待に目を光らせて見上げるレオンに
「やってもらいなさい」
 とすすめる。

 緊張した面持ちで立つのを見届けると、少し離れた岩まで下がり腕を組んで腰掛ける。

 そんなレオンの様子を見て取ったのか、歩いて正面に立つとトール師はふっとほほ笑んだのがわかった。

 次に腰に佩いた剣をすらりと抜くと、おもむろに両手で顔の前刃を上にして捧げ持ち、目を閉じる。
 その動作に一瞬目を疑った。
 まさか…?

 次に目を開いて時計回りに刃を下に向け大地に刺し、跪くと両手を絵に添えてしばし頭を垂れる。

 それは正式な試合をする際の初めの儀式。
 よほどの試合でない限り、最近では刃を軽く合わせるだけの略式で済ませるため、学校でしか教えていないものだった。
 当然自分もレオンには教えていない。

 そのきれいな所作に見とれてぽかんとしているレオンに慌てて心話を送る。
(トール師匠の真似をしなさい、レオン)

 慌てて剣を抜き、その所作を真似るのを確認してから、敬意を表してくれたトール師に黙礼する。
 これであの子にとって特別なことになったに違いない。

 その黙礼に対して微笑み返して所作を続けるトール師と懸命に真似するレオンをすこしくすぐったいような気持で眺める。

 一連の所作が終わると二人は構えに入った。
 さすがに空気がぴんと張り詰める。

 レオンはどのように出ていいのかわからず困っているようだった。
 しかしよく見るとそうでなく、トール師のエネルギーを見ているのがわかる。
 あの子は本能的にエネルギーを見、それに対応して動くすべをもとから持っていた。

 すっとトール師が動いた。
 その流れは通常よりやはり遅く、でも初心者を相手にするには少し速い動きだった。
 通常の子供なら受け止めることも、反応することもできないだろう。
 これでどのくらいなのかを様子見するようだった。

 しかしレオンは無意識にそれに反応し、トール師の刃を受け止めた。
 金属音がしてレオンも自分が防いだことに気がついたようだった。

 それを見てトール師は楽しそうに笑った。
 いったん剣を引くと次を振り下ろす。
 レオンはそれも防御し、わかったようだった。

 自分が「ヒカリ」と呼ぶエネルギーを見ることでいち早く反応し対応ができることを。
 顔が明るくなったのをみてそれを感じた。

 しかしトール師はそのままではいかなかった。
 いきなりテンポを上げたのだ。
 しかも初心者では到底太刀打ち出来ないスピードに。

 レオンもいきなり早くなったスピードに追い付けず、慌てたのがわかった。
 対応しきれていない。

 無意識に足が前に出て、気がついた時にはレオンの頭上から降ろされる剣を止めていた。
 
「師匠、お願いします」
 そう口に出していた。

 声は平静に出たが、我ながら信じられなかった。
 トール師が年下の剣を習い始めた子を相手に本当に切るわけがなく、寸止めすることくらい予測できたはずだ。
 なのに思わず手が出てしまった。
 今までにないことに自分でも戸惑いを感じる。 

「いいとも」

 トール師はそういうとにやりと笑った。
 たぶん今の行動も見透かされているのだろう。

 その場に座り込んだレオンを残し、少し離れたところで指南の続きを始める。
 切り込む、受ける、つく、流す。
 
 真剣で行うことの緊張感と、先ほどの行動に対する恥ずかしさで少し攻撃的に攻める。
 そのため少し防御への反応が遅れ、突きを払いきれず左肩に刺さってしまった。

「つっ…」

 即座に剣をおさめたトール師に腕をつかまれる。

「見せてごらん」

 言われていつものように断ろうとした。

「いえ、こんなのは……」

 しかしトール師の視線はレオンをみろと言っていた。
 目をやると大きな眼をうるませて心配そうに見ているレオンが目に入った。
 
 だめだ。
 どうもあの眼には弱くていつもの自分の強気が出せなくなる。

「お願いします」

 そう溜息ととともに小さく呟いて治療をされると、レオンが安心したような顔になるがわかった。

(君はレオンがいると無理をしないな。いいことだ)

 そうトール師に心話で言われ微笑まれると、思わず呻きそうになる。
 自分は無理をしているつもりはないが、周りにはよく言われるのでそうなのだろう。
 それが当たり前だと思っていた。

 確かにレオンがいるといつもの自分のペースが狂う。
 でもそれを嫌だとは思わない自分もいて、思わず戸惑ってしまう。

 自分の中の変化に自分でもどうしていいのかわからない。
 今まで他人など、どうでも良かったのに、レオンに対してはそのスタンスが崩れるのだ。

「もう一本お願いします」

 その羞恥やもろもろの想いをいったん振り切るためにも怪我の治療が終わるとトール師にそうお願いした。

 やれやれ、とトール師が嘆息するがわかった。

~・~・~・~・~・~・~

読み返して、我ながら困った人だとつくづく思ってみたり(苦笑)
当初はらし過ぎて本体は大笑いしまいた。

ちなみにスタンスが微妙に崩れる相手をもう一人最近発見しました。
その話はまたいずれか。

ちなみにmixiを持っている方はかほりさんのブログ記事「トールさんとお手合せ♪」を読まれるともっと面白いかもしれない。

*追加*
さつきのひかりさんの銀月物語のほうで、トールさん視点がアップされました♪
銀月物語74 ヒカリの子」も合わせてご覧いただければ、より面白いかと。
彼の困った(?)性格がより明らかに(苦笑)って私だけどさ^^;

※この物語の登場人物などに関しましては「水晶薔薇庭園館綺譚について」をご参照ください。
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Comments

絵本ヴァージョン(笑)へのリンクありがとうございます♪
・・・すげーこっ恥ずかしくて本体の私からはコメント書けません・・・(爆)
Posted at 2009.07.24 (13:40) by かほり (URL) | [編集]
こちらも、明日「ヒカリの子」をアップするとこでしたよw
よければトラバさせてくださいね~
そしてこちらにもしてください♪
Posted at 2009.07.24 (13:41) by さつきのひかり (URL) | [編集]
> 絵本ヴァージョン(笑)へのリンクありがとうございます♪

わははははi-179
勝手にリンクごめんなさい。
でも絶対あっちも読んだ方が面白いからさ(笑)

> ・・・すげーこっ恥ずかしくて本体の私からはコメント書けません・・・(爆)

そーゆーもんです。
書かれるとね(苦笑)
Posted at 2009.07.24 (19:36) by たか1717 (URL) | [編集]
> こちらも、明日「ヒカリの子」をアップするとこでしたよw

おお~!v-352
そうだったんですね、本当にナイスタイミング。
って上で打ち合わせしていたらどーしましょう(笑)

> よければトラバさせてくださいね~
> そしてこちらにもしてください♪

はい、させていただきます。
Posted at 2009.07.24 (19:37) by たか1717 (URL) | [編集]
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なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
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