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Dark Age 10 出会い3

 飲み会は結構な盛り上がりを見せた。
 未成年のため酒は飲めなかったが、それでも十分に楽しく話せたし、料理もおいしかった。
 
 魔法学部だけあって、魔法の話になるとみんな真剣だったし、楽しみながらも真面目だった。
 また普通の教授のうわさ話や、裏話や、テスト対策まで、先輩も含めまぜっかえしながらも楽しかった。

「エルス、お前そろそろ先に帰った方が良くないか?」

 そう言われるまで時間を気にしなかったから、どれだけ楽しかったんだろう。

「ああ、確かにまずいや」
「なんだよ?何でそいつは先に帰るんだ?」

 魔法学部の2年生の先輩が不思議そうに聞いてきた。

「俺、飛び級してるんで、まだ夜遅い時間歩くと年齢的に補導されるんです」

 苦笑してそう答える。
 実際に高等学校生が夜遅く歩いても、そんなに危険は少ないし、町の治安は悪くなかった。
 ただ最近は軍が勢力を伸ばしつつあるから、そろそろ物騒になるんじゃないか、という話はあった。

 一応変なことに巻き込まれないようにと、目を光らせている専門員が居るし、そう言う人に掴まると後が面倒だった。
 
「お前ひとり歩いた方が、危なくないか?」
「はい?」

 先輩は俺をしげしげ見て、そう言った。
 意味が良く分からない。

「先輩~、だからこそ早く返さないと」
「そうかもな。じゃあ、気をつけて帰れよ」

 クラスメイトの助言?を受けて、そう送りだされる。
 訳が分からないまま、上着を着て、店を出て歩き出す。

 夜遅く、と言っても始まったのが午後6時ごろでそれから4時間余りだから、まだ夜10時くらいだった。
 まだまだ人が多く、明かりも多い。
 これくらいなら、下手したら塾などに通う高等学校生がまだ歩いている時間だった。
 あまり警戒しなくてよさそうだった。

 その時、後ろから駆け寄る足音が聞えた。
 
「エルス、待てよ」

 追い付いて肩を叩かれるのと同時に、声が聞こえた。
 あいつだ。
 飲み会に来ていたが、他の奴らと楽しそうに喋っていたので忘れていた。

「何の用だ?」

 思わず冷ややかに聞く。

「送って行くよ」
「何で?」
「やっぱりこういうところで、ポイントは稼がないと、ね」

 にっこり親しみを込めた笑みを浮かべてそう言う。

「俺は女じゃないぞ?」
「分かっているよ。でも心配で俺がやりたいんだ」
「……勝手にしろ」

 そう言って無視して歩きだす。
 それでもアーサーはニコニコしたまま、俺の隣に来て一緒に歩きだした。

「エルスは何処に住んでいるんだ?」

 しばらくしてそう聞いてくる。

「寮」
「何処の?」
「デルス地区」
「ああ、あのレンガ造りのわりとアンティークな場所ね」

 直ぐに出てくるあたり、こいつは本当に色々と良く知っている。

「中身も結構アンティークで使い勝手が良くないって、クラスメイトがぼやいていたけど、どう?」
「気に入っている」

 確かに色々と不都合はある。
 でもそれを感受できるほど部屋はゆったりしていたし、その不都合を工夫するのが楽しかった。
 何より朝晩食事が付いているのが有難かった。
 簡易キッチンも付いているが、そこで料理する腕前も無かったから。

 それに両親と共に居なくて済むもの、かなり気が楽だった。

「じゃあ、今度遊びに行っても良い?」

 そう言われて、思わず奴を睨んだ。

「来るな」
「えええ~~~、そう言うと行きたくなっちゃうなぁ」

 冗談じゃない。
 俺にとって居心地の良いように作った場所に、他人を入れるなんてもってのほかだった。

「来ても入れないぞ」
「ケチ~。入れてよ~~」
「何でそんなに来たがる?」

 思わずイラついて冷たい言い方になっていたと思う。
 それに構わず奴は続けた。

「そりゃ、エルスの素顔が見たいからに決まっているじゃない」

 にっこりと微笑まれて、思いっきり渋面を作る。
 何をほざいているのだ、こいつは。

「大体ね、エルス前髪長すぎ。
 幾ら綺麗な金髪でも、顔が隠れたらもったいないでしょ。
 この眼鏡も邪魔だよね」

 そう言うとあっという間に眼鏡を取られる。

 ヤバい。

 取られた途端に流れ込んでくる、物理的に聞えない声、見えない姿。 
 わーん、と頭の中で響きまくる。
 久しぶりのそれらに、頭を抱える。
 飽和しそうだった。

「あれ、これ、伊達眼鏡?
 いやちょっとだけ度数入ってる?
 掛けてなくても問題ないんじゃ……」
「返せ」

 何か言っているのを遮りようやくそれだけ言う。

「エルス?そんなに怒らなくても……」
「返せと言っている!」

 そう言って取り返そうとして、失敗する。
 その時何かに気づいたように、アーサーは立ち止った。 

「というか、大丈夫か?具合悪そうだな?」
「いいから!眼鏡!」

 そう言って俺の眼鏡を持っている手をようやくつかんだ。
 そうして長めの前髪越しに睨みつける。
 奴はびっくりしたような顔をしていた。

 その時。
 不意にチューニングがあった。
 そいつのエネルギーコードの情報が読み取れた。
 そして違和感に気づいた、気付いてしまった。

「……、アーサー、お前、ツインコードが、ない……?」

 思わず口走ったそのセリフを聞いて、アーサーの顔色が変わった。
 真剣な、真面目な、驚いている顔だった。

「エルス、お前何を」
「………裸眼だと、通常見えないエネルギーやオーラ、精霊・妖精、そういったものが嫌でも見えるし、音や声が聞こえるんだ。
 だから普段はリミッターとして、眼鏡をしてる。
 そうすれば大半のものは遮断できる。
 返してくれ」

 そう言うとアーサーは黙って眼鏡を返してくれた。
 それを黙って掛ける。

「……ごめんなさい、すまなかった」

 ようやくそれだけ言う。
 たぶんこれは、アーサーにとって他人に知られたくなかったモノだ。
 自分が見ることで、こいつの傷を暴くつもりはなかったのだが。
 嫌でも目線が下に行く。

 何度同じことをやっても慣れることが無い。
 見えることで伝えることで、誰かを不意に傷つけてしまう。
 隠しておきたい事を、暴いてしまう。
 それによって俺は両親から敬遠されていた。
 だから家に居たくなかった。
 出来るだけ早く自立したくて、飛び級もした。

 ぽん、と頭に手を置かれた。
 顔をあげるとアーサーが苦笑していた。

「ま、見えちゃったもんは仕方ないな。
 エルスも見たくて見た訳じゃないんだろ?」

 そのセリフに黙って頷く。

「取りあえず、寮まで送るよ。歩こう」

 そう言って促されて、歩きだす。
 さっきとは違い、重い足取りになる。

「うん、そうだよ。
 俺、前世でツインにツインコード切られたんだ。
 どうしてもやらないといけない役割があるからって、あっさりと」

 そう淡々と明るく話す内容に何と言っていいのか分からず、黙って聞いていた。

「でも俺、どうしても諦めきれないんだ。
 あいつじゃなきゃダメなんだ。
 だからまた会うんじゃないかと思って、あっちこっち顔を出して繋ぎを作っているんだ。
 何処かで巡り合うんじゃないかって」

 一度そこで言葉を斬った。

「そうやって探しているんだ」

 言いたい事は分かった。
 そうだ、一人で探すしかないんだ。
 例えほとんど感知できなくなっても、何処に居るか分からなくても。
 諦めることなんてできない。
 ただ、探すしかないんだ。
 どうすればいいか分からなくても、とにかく信じていくしかないんだ。

「寂しいのか?」

 ふと、気になって聞いてみる。
 するとキョトンとした顔をした。
 そしてふっと苦笑を浮かべる。

「うん、寂しい時はあるね。
 誰かを無償に求めなくてはいけない時とか。
 でも誰かと一緒に居ても、寂しくないのはその時だけで、後はもっと寂しくなるかな。
 それでも一時だけでも、誰かと一緒に居たいと思うのはおかしいことかな?」
「おかしくない、と思う。
 お前の場合やり過ぎだけど」

 暗に遊び人のことを指摘してやる。

「ははははは、そうかもな」

 そう言ってにこやかに笑うそいつは十分に強く見えた。
 寂しいと言っても、誰かを求めることのできる強さ。
 少しだけ羨ましいとも思った。

「じゃあ、また明日な」

 寮の前で、アーサーはそう言って帰って行った。
 俺は少しさびしい気持ちで部屋に入った。
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なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
妄想かもしれないこの話、楽しんで頂けるとありがたいです。

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