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Dark Age 9 出会い2

 残念ながら、また会うことはないだろうという予測に反して、奴は翌日また姿を現した。
 しかも今度は講義室移動中の廊下を歩いている真正面から来た。

「よお、また会ったな。偶然とはいえ、これも運命の出会いかな」

 そうやって声をかけてきたのは、青みがかった銀髪に明るい空の色の瞳の奴だった。
 わりと整った風貌で、女受けはもとより、それなりに男にも受けそうだった。
 とはいえ中性的な訳でなく、男らしい感じ。
 体格もわりとよく、身長は俺より高い。
 最初、思わず顔を見上げて、怪訝な顔をしてしまった。

「あれ?覚えてない?
 昨日ロッカールームで声かけたでしょ」

 言われて、更に声を聞いて思い出した。
 思わず渋面を作る。
 そのまま視線をずらし、その横を通り抜けようとした。
 だがそいつは方向転換して、俺の隣を歩き始めた。

「正面から見てもやっぱり綺麗だな。なあ、ちょっとくらいお茶しない?」

 その軽い言い方に、誘い慣れた響きがあった。
 それを無視して、黙々と足早に歩く。
 こんなところで言い合っていては、次の授業に遅れる。
 必須科目以外の授業の取り方に失敗して、移動にかなり距離があるのだ。

「ねえ、ちょっとくらい話してくれても良いんじゃない?」

 困ったような響きで、そいつはこちらが無視するのも構わず声をかけてくる。

「知らない奴に何を話せと?」

 思わず冷笑と冷たい口調でそう言ってやる。
 ついでに眼鏡越しにちらりとそいつを見る。

「確かに自己紹介して無かったねぇ。
 俺は●●学部2回生のアーシェリー・レリック。
 アーサーと呼んでくれればいいよ」

 そいつは俺の態度を丸っきり気にせず、自己紹介をしてきた。
 そのことのに呆れる。

「で、君は?」
「…………」

 聞かれて困惑する。
 こちらはあまり知り合いになりたいとは思わなかったからだ。
 そのまま黙っていると、そいつが口を開いた。

「なかなか連れないねぇ、エルシフォン・マーべリック君?」

 いきなり名前を呼ばれ、思わずそいつを見る。

「あ、こっち見てくれた」

 そいつ、アーサーはそう言うと嬉しそうに破顔した。

「名前、何で…」
「ふふん、俺の愛の力だよ」

 冗談を言うそいつに冷ややかに睨みつける。

「というのは冗談で。ロッカー番号から名前を調べた」

 話を聞いて思わずそれは違法行為じゃないかと頭を抱えそうになる。
 
「あ、何もやましいことはしてないぞ。ただ単に事務局の女性に、ついでに聞いただけだぞ」

 必死に言い訳をするそいつに冷ややかな視線を向ける。
 つまり事務局の女性に声をかけたのか。
 こいつの話し方からすると、本当に気に入った相手には速攻で声を変えていそうだった。

 足が止まったのを見て、そいつは更に言ってくる。

「ね、授業が終わってからでいいから、お茶しない?」

 人懐っこいそれは大抵の奴は、まあそれくらいなら、と思うものだろう。
 でも俺はそんな気にはまるっきりなれなかった。

「他を当たれ」

 それだけ言うと、講義室の扉を開けて中に入る。
 同時に講義開始の合図が鳴った。

「そう、じゃあ、またね」

 後ろ手に扉を閉める寸前、そんな声を掛けられた。
 そのことに溜息をつきそうになる。

 そうしてこの時から、奴は何かにつけて俺の周りに現われるようになった。

 だからと言って俺に会うために無理して来ているのではないのは、見ているうちに分かった。
 どうも奴と俺とは行動範囲が重なっているようだった。
 廊下、食堂、学内カフェなど、見たら声をかけてくる、というのが奴のやり方だった。

 もちろん、俺を見つけて声を掛けるまでに、女の子には必ずと言っていいほど声をかけ、また声を掛けられていた。

 俺に声をかける時も、俺が級友達と居る時はそんなにしつこくすることはない。
 普通に挨拶程度のものしかない。

 一人でいると側に寄ってきて、一通り誘いのかかるが、だからと言ってねちっこく嫌になるものでもない。
 だからその内、そいつが声をかけてくるのが当たり前になりつつあった。


「エルス、一人か?前、空いてるよな、いいよな?」

 俺が食堂で一人で飯を食っていた時にそいつは空いていた俺の前に、トレーを持って座った。
 俺が何か言う間も無かった。
 でもそれが嫌な感じも無かったので、そのまま無視して俺は飯を食べた。

「相変わらずだねぇ。まあ、それがエルスの良いところだよな」

 そう言ってそいつはご飯を食べ始めた。
 同時に俺が何も聞かないのに色々と話し始める。
 これもいつものことだった。

 その話を聞いてるうちにこいつが本当に遊び人なのは、良く分かった。
 誰と飲みに行ったとか、誰に声を掛けられたとか、誰と寝たとか。
 男女構わず本当に、良いと思った奴とやっているのは、それまでの話でもよく分かっていた。
 だが、それでも誰にも恨まれずに居るのは、やっぱり何かあるんだろうな。

 ぼんやりそんな事を考えながら、そいつの話を聞くとも言えずに飯を食っていた。
 そして不意に話が途切れた。
 不思議に思って顔をあげると、近くに女の子が立っていた。

 その子は決死の覚悟でそいつの声をかけたようだった。

『席外したほうがいいか?』

 目線でそう聞くと、

『いや、居てくれた方が有難い』

 とやはり目線で言ってきた。

「何か用?」

 そいつは彼女ににこやかに、でも冷ややかに声をかけた。
 その口調に思わず驚く。
 こいつがそんなに冷たい声を出すとは思っても似みなかったのだ。

 彼女はこちらを気にかけているようだったが、俺が無視して飯を食っているのを見ると、覚悟してそいつに向って言った。

「あの、私、貴方のことが好きです。
 ですから、お付き合いして下さいっ!」

 真っ赤になって一気にそういった彼女を、アーサーは冷ややかに見ていた。

「ごめんねぇ、悪いけど俺、君とは付き合えないや。
 気持ちは嬉しんだけど、悪いね」

 アーサーは口調は一見いつも通り、でも取りつく島のないくらいハッキリと断った。
 そのことに更に驚く。

 彼女は断られるとは思ってなかったのかもしれない。
 しばらくポカンとして、どうしていいか分からないようだった。

「あの、でも」
「残念だけど、俺の好みじゃないから」
「お、お友達の一人でも、良いんですっ」

 なんとか食い下がろうとするその子に対して、更に奴は冷ややかに言う。

「でも君は、俺が他の沢山の人と付き合うのは、耐えられないでしょ?
 俺は誰か一人の人には決められないよ。
 だから君とは付き合えません」

 そう言いきると、奴は彼女から視線を外した。
 彼女は踵を返して、そこから離れて行った。
 泣いていたかもしれない。

「意外だな」

 その子の姿が見えなくなってから、俺はそういった。

「何が?」
「来るもの拒まず、だと思っていたからさ。
 振るとは思わなかった。
 あんな真面目な一途なこの、何が不満なのさ?」
「真面目で一途だからだよ。
 俺みたいな遊び人には勿体ないでしょ?
 そもそも俺にはツインが居るしね」

 その答えにも驚く。

「ツインが居るなら、尚更遊ぶの止めたらどうだ?」
「でもまだ再会ってないしねぇ……」

 そう言って苦笑するそいつに思わず黙る。
 ツインが居る、と覚えていても今この世界の何処に居るか知らないのでは意味が無い。
 そして、居ないと分かっていても……。

 思わず胸の痛みがぶり返しそうになって、残りの飯をかきこんだ。

「それよりさ、エルス、今晩暇なら晩飯食べに行かない?
 良い場所い知っているんだけど、どう?」

 いつもの口調に戻ってそいつは俺に誘いをかける。
 この流れで、何処をどうしたらそう言う話になるか、毎度俺は理解に苦しむ。

「悪いが今夜は飲み会だ」

 そう言って断る。
 クラスメイト達とその友人知人が集まってのモノだ。
 もっとも俺は未成年だから、酒は飲めないのだが。

「あ、そーか、そうだった。魔法学部の基礎クラスのだよな?
 俺も誘われているんだった。
 じゃあ、俺もそっちに行こうかなぁ」

 その話を聞いて少し嫌な気持ちになる。

「勝手にしろ」

 そう言うと荷物と食べ終わったトレーを持って、返却口に返しに行く。
 そのまま学食を出た。
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なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
妄想かもしれないこの話、楽しんで頂けるとありがたいです。

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