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紅緋古譚 17 対価1

 気が重い。
 思わずため息をつく。
 まったく何でこんな約束をしてしまったのか。

 確かにあの時は絶対的な危機だった。
 まさか本当にあいつの策で切り抜けられるとは思っていなかった。
 だからつい対価にしてしまったのだが。

「一晩たっぷり付き合ってよ」

 それの指定が今晩だった。
 
「俺は翌日休みだし、ルーちゃんも昼からでしょ?その方が存分に楽しめるしね」

 嬉しそうに言ったそいつを殴り倒したかった。

 奴は“狼<ウルフ>”と呼ばれていた。
 もちろんコードネームだろう、本名は分からなかった。
 凄腕の工作員だ、と言うのは噂で知ったことだ。
 誰も本当なのか分かってない様だった。
 しかし奴は下手したら一月もふた月も基地に居ないことがあった。
 広い部署の多い基地とはいえ、さすがにそんなに長いこと姿を消していることは不可能だ。

 くたばったか、と思うころに再びひょっこり現れて、おれを構い倒した。
 こいつが剣ではまるっきり掠ることも出来ないが、素手だったら平気で殴られるのを知ってからは、それがコミュニケーションの手段になった。

 そしていつの間にかおれ達が付き合っていることになっていた。
 実際はまるっきりそんな事は無かったのだが。

 まあ、お陰で不用意に手を出そうとするバカが少なくなって、助かったのは確かだ。

 が、実際にやるとなるとまた別だった。
 こいつは本命がいるから、おれには手を出さないと思っていたのだが、甘かったようだ。
 男なんざ、やることしか頭にないんだな、と改めて認識する。

 イライラと逡巡するが、何時までもこうして自分の部屋でうろうろしている訳にはいかなかった。
 でも素面で行くには腹ただしく、部屋に取ってあった酒を呷ってから、部屋を出た。
 
 意を決して、指定された奴の部屋に行く。
 ノックをすると、直ぐに開いた。

「やあ、待っていたよ。あまりにも遅いから、そちらに行こうかと思ったよ」

 にこやかにそう言われて、冷ややかに見る。

「さ、入って入って」

 後ろにハートマークでも付いているのではないか、と思うくらい上機嫌だった。

「それにしても、もうちょっと色気のある服を着て来てくれたらよかったのになぁ」

 おれを部屋に入れながら、そう言った。

「んな服あるか。軍の支給品だぞ」
「ルーちゃん、抜け道くらい沢山あるのをいい加減認識しようね」

 呆れたように言われる。
 こいつにはよくそう言う事を言われ続けた。

 部屋はおれの場所より広かった。
 居間とベッドルームがわかれている。
 更に調度が上等なものだった。
 そこにこいつとの地位と階級の差を知らされる。

「で、どうする?取りあえず服を脱げばいいのか?」
「…………、ルーちゃん、情緒ってモノも、大事にしない?」

 呆れたようにそう言われる。

「んなこと言われてもな、やる時と言ったら、押さえ込まれて、多数を相手にするか、強引に縛られるか、拘束されて教官室とか適当な場所でヤられた経験しかないからなぁ」
「……ルージュ」
「殆どはおれが始末つけて生きてないけどな。せいぜい教官くらいか」

 事実を淡々と言うと、そいつは近くに来て、両手で顔を挟み、真剣な顔でおれを覗きこんだ。
 普段見ない様子に思わずうろたえる。

「ルージュ、それはね、経験にカウントしなくていいんだよ」

 静かな声でそう言われて、戸惑った。
 普段の軽い物言いが、如何に仮面なのかを知った感じだった。
 両手で顔を持たれている為、首を動かして逃げるわけにいかず、思わず視線だけそらす。

 どう対処したらいいのだろう。
 分からず途方に暮れる。

 と、いきなり唇がふさがれる。
 キスされている、と一瞬遅れて分かった。
 一瞬過去に無理やりされたモノを思い出して、嫌悪が背中を走る。
 が、そいつはそうじゃ無かった。
 強引に唇を割って入ってきたが、優しく探られて、余計に戸惑った。
 そんな風におれを扱う奴などいなかった。
 だから変な気分でどうしていいか分からなかった。
 
 思わずそれをやめさせようと肩に手を掛けた。
 が、敵わなかった。
 それよりもっと不思議な変な感覚に満たされ、耐える為に、そ何時の服を握るのが精いっぱいだった。
 
「お前、経験悪すぎ」
 
 そんな事を間近で言われたが、ようやく外された唇に、おれは息をつくのが精いっぱいだった。

 すると奴はひょいとおれを抱き上げた。

「おいっ」

 思わず慌てる。

「暴れるなよ。落したくないからな。それに大事に扱いたいし、何より俺をを忘れられなくさせてやるよ」

 真剣な顔でそう言われて、本気で困った。
 一応剣は持ってきているが、それをふるうのをためらわせる何かがあった。
 どうしたらいいのだろう。

 そうしておれは奴のベッドの降ろされた。

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なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
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