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江戸的昔噺 2

ただのお噺です。
さらっと流して下さいね?

++++++


 珍しく長兄が俺の家を訪問していた。
 通常は呼び出されることが多いので、驚いた。

 更に驚いたことに、長兄は土産だ、と言って風呂敷を置き、広げた。
 どさり、と置かれた書物に目を見張る。
 珍しい蘭学の本だった。

「珍しいモノが手に入ったんだ。好きだろう?
 お前一人では持ちきれないだろうから、持ってきた」

 そう言って笑う。

「あと、精のつくものも手に入ったから食べろ。
 @@@に渡してある」

 あまりのことに、言葉が出ない。

「何かありましたか?」

 気になって尋ねてみる。
 長兄が俺にこんな風に何かを持って、訪問すること自体が普通じゃない。
 何が大事があって、頼みに来たのだろうか?

「いや、大したことじゃない。
 旦那衆の一人がすごくお前の育てた『奉公人』を気に召してな。
 礼がしたいと言うので、お前が本が好きだと教えただけだ。
 そうしたらこれと珍しい食材をを持ってきた」
「そうですか……」

 軽くため息をつく。
 『奉公人』が幸せな環境にいくかどうかは、自分ではなんともし難い。
 でもわざわざ礼をしに来たのなら、気に入ってくれたのだろう。
 それならば大切に扱うはずだ。
 その事に少なからずほっとする。

「それとな、あいつに怒られた」

 苦笑交じりに言う「あいつ」が誰か思い当たって、苦笑する。

「めちゃくちゃ言われましたか?」
「めちゃくちゃどころじゃないな、表で文句を言われそうになって、慌てて奥へと通したくらいだ。
 あれじゃ俺が弟を顎で使う冷血漢の用だったぞ」

 そのことを思い返したように笑う。
 それくらいじゃ本来この長兄は痛くもかゆくもないはずだった。

「それと……、一つ言っておこうと思ってな」
「何ですか?」
「お前、外に好いた女の一人でもいないのか?」

 あまりのことに目が点になる。
 そんな事をこの長兄が言いに来るとは思わなかった。

「いや、その、お前にあいつを押し付けてしまったし……、他に好きな女の一人でもいるなら、囲うなりなんなり幾らでもしていいからな。
 結局お前の自由にさせてやれる事など殆どないのに、気付いてな」

 そう、視線を外して言う。
 あいつが何を言ったか分かったような気がした。

「いませんよ、好きな女なんて。そんな暇も出会いもないし。
 それに夫が小さい女の子相手に何をしているか知って、心穏やかに居る女などいませんしね」

 笑いながらそう言う。
 今の妻が平然としているのは自分の好いた男じゃない、と言うこととまるきり関係がないことに尽きる。
 それと先代の叔父の教育で育ったこともあるかもしれない。

 本当に縁とは奇妙なモノだ。

「そうか…」

 それだけ言うと長兄は口をつぐんだ。

「後で妻に今晩あらためて礼を言いに行かせます。たまにはゆっくりしてください」

 その意図する内容に気付いて、兄は呆れたようだった。

「お前、本当に手を出してないのか?」
「あの子たちの教育で、そんな暇ありませんから」

 そう言ってにっこり笑う。
 兄は複雑な顔をしていた。

「兄(あに)さま、よろしいでしょうか」

 その時ふすまの向こうから、女の子の声がした。
 丁寧な口調だ。
 それは合格点をやれるな、と思う。

「なんだい?」
「兄さま、お手前を見ていただきたいのですが、いかがでしょう」
「今お客が来ているから部屋で待っていなさい」
「はい、分かりました」

 そう言うとその気配は去って行った。

「兄さま、と呼ばせているのか……」
「ええ、それが叔父から受け継いだ約束の一つですから」

 こちらの家業の詳しい話はこの長兄にも次兄にもしていない。
 それはこちらの稼業を引き継いだもののみ、知っていることだからだ。



 兄を玄関先から見送った。
 そして気付く。
 ふすまの向こうでじりじりと待っているのを。

「こら、お客様を覗くなんて、してはダメだよ」

 ふすまを開けて、そこに張り付いていた3人の子に注意する。

「ごめんなさい、兄さま」
「早くお手前を見ていただきたくて」
「今のは旦那さまでは無いのですね?」

 それぞれが口にする。

「違うよ。お前達の旦那様が来るのは、もう少し後だよ。
 お前たちがちゃんと色々と覚えてからだよ」

 微笑みながらそう言う。
 彼女たちはほっとしたような、残念そうな顔をした。

「さて、お手前を見せてもらおうか。部屋に戻ろう」

 そう言うと嬉しそうに、俺にまとわりついてきた。
 そのままその子たちが習字をしていた部屋に行った。

+++++

ちなみに、妻とは兄の愛人さんですねぇ。
体裁その他いろいろあって、妻として娶ったという形にしてます。
お世話はしてもらってますが、夜の営みはありません。

一応3人兄弟ですが、上二人とは母親が違います。
それもあって昔は色々あったみたいです。
身体が弱かったのも、ありますし。

その為物静かな本の好きな青年になったのでした。

当時はこんな感じでした。

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なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
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