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江戸的昔噺 1

昔話です。
さらっと流して下さいね?

++++++

 その子が「旦那様」に引き取られていくのを家から見送った。
 重いため息が出る。
 仕方のないことだとわかってはいるものの、嫌悪と無力感で一杯になる。

「よお、大丈夫か?」

 いきなり後ろから声を掛けられて振り向く。
 幼馴染がこちらに入ってくるところだった。

「なんだよ、いきなり」
「いや、また、ここから出ていく子を見かけてさ、お前さんが気になったんだよ」
「大丈夫だよ」

 思わず微笑みを作ってそう言う。

「何処がだ?青い顔をしているぞ。今にも倒れそうだ」

 覗きこんでそいつはそう言った。
 思わず笑う。

「大丈夫だよ。大丈夫じゃなきゃ、こんな商売やってられないよ」

 そう言うとそいつは怒ったような顔をした。

「お前さ、今からでも足洗ったらどうだ?こんな商売お前には向いてないぞ。
 何なら俺が色々と手配して、分からないように匿って逃がすことも出来るぞ」
「それでどうなるんだい?俺が居なくなったからと言って、商売がなくなるわけじゃない。
 下手したら子供たちはもっとひどいところに連れていかれて、辛い目にあうだけじゃないか」
「しかしな…・」
「座っていい?」

 話を続けようとするのを遮って、庭の縁側の方を指す。
 そいつは取りあえず黙って頷き、後ろからついてきた。
 縁側に座ると思わずほっと息をつく。

「やっぱり大丈夫じゃねぇじゃねぇか」

 それを見咎められ、怒られる。
 こいつは本当に変わらない。
 幼いころの兄貴分のまま、俺に接してくる。

 裏家業を継いだ俺に普通に接してくる奴は居ない。
 みんな距離を取り、遠巻きに見ているだけだ。

「大体なぁ、お前の兄貴たちの表家業は順調なんだろ?そしたらこんな裏稼業は辞めちまえばいいんだ」
「無理だろうねぇ。表は結構色々と左右されるし、不作になればかなりの打撃だ。
 逆にこちらは不作が起きれば売り込みが多くなって、忙しいからね。
 二つが支え合って保っている家だからなぁ」

 一番上の兄が表の商売を継ぎ、二番目の兄がそれを補佐している。
 更に2番目の兄がこちらの商売の仲介をやっている。
 そう言う家の裏表のからくりを説明をする。
 こいつは嫌な顔をしながらそれを聞いていた。

「ふん、何ならその二番目の兄貴がこの仕事をすればいいんだ」
「そんなことしたら、女の子たちは『旦那様』のところのいく前に、壊れちゃうよ」

 思わず苦笑してそう言う。
 二番目の兄は女でやれるなら、年齢は関係ない人だった。
 表の問屋家業の奉公に来た幼い女の子に手を出して居るのは、働いている誰もが知っている秘密だった。
 そしてその乱暴な扱いも。
 だから女の子の奉公人が来たら、出来るだけ2番目の兄の側に行かせないように気を使っていた。

 だからこちらに預かる子も、直接こちらに連れてくるように言ってある。
 商品価値の説明をしたら、商人であるその兄は自分の欲望を優先して、売り上げを落とすより、高く売って遊郭に遊びに行く方が得だと計算したようで、それを守ってくれている。
 
「お前なぁ……、だからと言ってお前が貧乏くじ引くことなかろう」
「まあ、そうとも言うかな」

 思わず縁側で後ろに倒れ込む。

「でもさ、何を言っても、何をやっても、俺がここにいなくても、あの子たちを救う事なんて、出来ないんだよね。
 既に旦那衆の慰みモノになることが決まっているんだもの。
 あの子たちのいく末も決めることも出来ない。
 どんな扱いや運命が待っているかもわからない。
 俺に出来るのはここにいる間に、出来るだけこれからの生活を苦痛に感じないように、大事にしてあげることだけなんだよね……」
「……だから読み書きや行儀作法をも教えているのか?」

 告白に、そいつは低い声で尋ねた。

「うん、読み書きができれば、飽きられたり、『使いもの』にならなくなっても、価値があるから殺される可能性が少ないし。捨てられてもなんとかなるからね。
 行儀作法が出来ると、結構それだけで珍重してもらえるのもあるかな。
 だから妻も裁縫を教えたりしているし。
 お陰で評判はいいんだよ」
「だからって、お前が苦しむ必要ないだろう」

 そう言われて苦笑いをする。

「良いんだよ。きっとこれは報いなんだよ、俺の。
 きっと前世ですごい悪い事をしたんだよ。
 だから今、こんなことをしているんだと思う」
「何が報いだ。覚えてもねぇ前世のことで、なんだ今お前が苦しんで、地獄に行かないといけないようなことをしなくちゃいけないんだ。
 不条理だろう」

 完全に仏頂面でそいつが行儀悪く足を組み、そう悪態をつく。
 
「おれたちはなぁ、苦しむ為に生れて来たわけじゃないんだぞ。
 お前は家を飛び出して、やりたい事をやっても良いと思うぞ」
「やりたいことねぇ」
「何かないのか?」

 言われて考える。

「やりたこことねぇ。
 そうだな、こんな家業じゃ無かったら、子供たちに読み書きやそろばんを教えたかったかな。
 男の子たちが暴れたりいたずらするのを叱りつけ、女の子たちのおませに苦笑しながら、過ごしたいなぁ」
「そういう子ども好きなお前が、こんな仕事をしているのはやっぱり不条理だ」
「そうやって怒ってくれるのは嬉しいな」
「馬鹿言ってんじゃねぇ!」

 そう言うと照れたみたいに怒られた。
 その時、客が来たみたいだった。
 二人連れで一人が小さい子のようだった。

「ああ、新しい子が来たね」

 そう言って起き上がる。

「じゃあ、俺は帰るな。辞める気になったらいつでも声を掛けろよ。なんとかしてやるからな」
「うん、ありがとう」

 そう言って幼馴染は別口から出ていった。
 俺は新たな客を迎える為に戸口へと向かった。


++++++++++

女衒のにーちゃんをやってました 苦笑
しかも扱うのが10歳以下の女の子って、何だよ。

これが出て来た時しばらく落ち込んで、受け入れきれなかったな。
今はもう大丈夫だけどね。

ちなみに名前は出てきません。
三郎とかそーゆーベタな名前だったと思いまふ。

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Comments

>三郎とかそーゆーベタな名前だったと思いまふ。

サンペイタ?

三平太。
とか。
Posted at 2010.08.16 (09:56) by KISSY (URL) | [編集]
> >三郎とかそーゆーベタな名前だったと思いまふ。
>
> サンペイタ?
>
> 三平太。
> とか。

かもしれない 笑
本当に出てこないもんで、なんともですが。
Posted at 2010.08.18 (21:01) by たか1717 (URL) | [編集]
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参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
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