スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

水晶薔薇庭園館綺譚0 はじまり(09年3月下旬)

 目が覚めて、あれ? と思った。
 なぜ自分はここにいるのだろうかと。

 ゆっくりと起き上がってベッドのふちに座る。
 まだ頭がぼんやりとしていて、頭が回らない。
 目を閉じてしばらく頭を支えるように額に手組んで当てる。

 確か下で熱を出してクリロズのヒーリングポッドを利用したのは覚えている。
 途中で下と意識が切れて、とにかくそのままお任せで何日か入っていた。

 そこから出て部屋に戻ってきたように思うが、そのあたりがはっきりしない。
 そしてもうひとつ気がかりなことがある。
 
 いま、この時間帯は下はまだちゃんと意識がある状態のはずだった。
 つまり自分がここにいること自体がありえないはずのこと。
 下が眠っているときは自分が優位となり、ステーションで仕事をしていたり、動いていたが。

 そう思って顔にかかる髪を見てさらに不思議に思う。
 なぜこんなに淡い色の髪の色なのだろうか。
 今肉体のある体は黒い茶色のはずだったし、クリロズにアクセスするときもそんな色だった。

 少し顔をあげて周りを見る。
 小さな簡素な部屋だ。
 ここにアクセスし始めてもらった部屋。

 同時に今までとみているのと感覚にずれを感じる。
 改めてゆっくり足もとから自分の体を見る。

 そして気づいた。
 自分がいま男性であることに。

 同時に下が自分が部屋にいることを感知し、不思議に思っているのも感じる。
 もともと同じ人間なので、気づかないはずがない。
 でも今はあるイベントに参加中で、こっちにはめったに来ない。

 そうして自分が何者かを改めて考えて、すぐに思い出す。
 下が思い出した記憶である自分に。

 エル・フィン。
 そう呼ばれていた。
 ということは今はその姿になっているのだろう。

 壁際に置かれた端末のある机の横に姿見があったはず、と思いだしゆっくりと立ち上がってそこに行く。
 間違いない、記憶にあるそのままの姿。
 ちょうど下が思い出したその時期のまま。
 
 淡い感じの少し長めの癖のない金髪にスカイブルーの瞳。
 ハイネックのノースリーブの黒いトップにカーゴパンツのようなものに素足。
 そう言えば黒のブーツが置いてあったな。

 改めてゆっくりと部屋を見る。
 ベッドの上に大きめのテディ・ベアが置いてある以外は、特に女性らしくも男性らしくもないシンプルな部屋。

 エネルギー的に見てもいくらか拡張・改装可能のようだった。
 部屋の主によってある程度は自由に変えれる様に余裕を持たせてある。

 そこまで確認して、まだ疲労が抜け切れてないのに気づき、ベッドに戻って座る。
 そもそも下もエネルギーがあまりまだ大きくないため、クリロズで動くには子ども姿で歩きまわっていた。

 なのに俺が下と別れて出てきて動こうというのが、やはりまだ無理があるようだ。
 そう思って、再び横になる。
 まあ、ゆっくりとどうなっているのか確認すればいい話だ。
 そう思って再びベッドに横になり、目を閉じた。
 起きたらまた元に戻っている可能性もあると、思いながら。


 改めて自分がいまここにいることを認識する。
 どのようなシステムになっているのか、自分でもよくわからない。
 今ここにいる自分が、下とは違う上の次元の意識があることには間違いない。

 身体も回復し、いつまでも部屋の中にだけいるわけにはいかず、探索に出ることにする。
 まず部屋のあるフロア。
 どうやら2階のようだった。
 下はもっと上のように認識していたが、それはたぶん自分がここに属さないという意識が影響しているようだった。
 後は多重構造による空間の広がり。
 確かに2階であるが、同時に上の方の階層にもなっているようだ。
 そういう意味では認識は正しい。

 ヒーリングエリアがある部屋の前まで歩いてみる。
 思ったよりたくさんの部屋があるようで、人の出入りも激しいようだった。
 エネルギーが思ったより色々と混じり合っていて落ち着かない。

 何人か知っているエネルギーがあったがまだ目覚めたばかりでよく識別できなかった。
 しかしどこか懐かしさと哀しみを覚えた。
 ゆっくりと周りを見ながら部屋の前まで戻り、そして階段のほうへ歩いて行く。

 ゆっくりと階段の手すりから下を見る。
 ちょうど玄関とホールが見えたので、そのまま観察する。
 どうやら訪問者はひっきりなし、というわけではないがそこそこあるようだった。

 すでに常連だったり、部屋があるものはそこから自由に階段を上がってくるし、どこか別の場所に行く人もいるようだった。

 初めて来たらしいちょっと戸惑った人は困ったように立ち尽くす。
 それに気付いたドラゴンが対応している。
 部屋の鍵を貰うものもいれば、そのまま館内探索に行く者もいるようだった。

 しばらくそれを見てからゆっくりと階段を下りていく。
 下が何度か来ていたので大体の間取りは分かっていたが、何せ下は子供ヴァージョンのためどうも勝手が違う。

 ゆっくりと玄関ホールを見渡し何故懐かしさを感じたのかを理解する。
 ここはあそこなのだ。
 しかし下が思い出していないためか、うまく引き出せない。

 思わず痛む胸に片手を当ててゆっくりと1階の探索を開始する。
 下が初めて踏み入れた時と同様泣きそうになる。
  
 いつの間に俯いて歩いていたようだ。
 
「エル・フィン!」

 そう声をかけられて顔をあげて、そちらを見る。
 そして驚いた。
 銀色の長い髪に青灰色の瞳の長身の男性が立っていた。

「マスター……」
「久し振り、ここで会えるとはね」

 昔ながらの何の含みもない笑顔に呆然とする。
 思わずまじまじと顔を見詰めてしまった。

「?何か顔についているかな」

 そう言われて我に帰る。

「いえ、あの、その……」

 何を言っていいのかわからず混乱する。
 信じられない失態だ。

「とりあえずお茶でもしようか、おいで」

 そうマスターは言って先導していった。


 お茶を飲んでゆっくりと部屋を見回す。
 どうやらここはマスターが頂いている部屋のようだった。
 マスターは昔と比べると線が細いように感じる。
 それとももともとこちらが本質だったのかもしれない。
 目覚めたばかりでまだよく思い出せない。
 
「大丈夫かい?」
「いえ、まだちょっと混乱してます」

 こちらがぼんやりしているためだろうか、マスターがそう声をかけてくださり、正直に答える。

「覚醒したばかりだから、無理もないよ」

 そう微笑みながら言われて、はあ、と生返事をする。
 なぜか今はステーションで働いている記憶もその他もぼんやりとして、つかみどころがない。
 今は下の記憶がメインとなってあるため余計に心もとない。
 分かっているのは本来下が寝ていると自分が優勢になって、動いているということだけだ。

「もう暫くしたら、こちら側の記憶もちゃんとわかるようになるから心配ないよ」

 そう言われてもあまり安心できなかった。
 そのまま黙ってお茶を飲む。
 マスターはこちらを見て微笑んでいる。

「なんですか?何かついてますか?」

 妙に居心地が悪くて訊ねる。

「いや、こんなに幼い君を見るのは久しぶりだな、と思って」
「そうでしたっけ?」

 幼い、と言われてちょっとだけ気分が下がる。

「ああ。“エル・フィン”と会ったのは成人した後だったし、それ以外も大体成人した前後だったからね」

 言われて自分がハイティーンのころの姿なのに思い至る。
 確かにマスターからみたら『幼い』のかもしれない。

 合間に呼び出し音が鳴りマスターが席を立つ。
 そして端末で何事かを指示して戻ってくる。

「マスターは今何をやってらっしゃるのですか?」

 念のために聞いてみる。
 下の記憶では確かここのスタッフだったと思ったが、本来は違う気がしたのだ。

「……その、『マスター』というのは辞めてくれないかな?今はここの一般スタッフなんだから。セキュリティとかを受け持っているよ」
「セキュリティ……。ではなんとお呼びすれば?」
「普通に『トール』で構わないよ。今の呼び名はそれだから」

 言われて考え込む。
 自分にとってマスターはマスターだった。
 それ以外と言われても悩む。

「ではトール師、その仕事手伝わせてもらっても良いですか?」
「師はいらないんだけどね。……手伝う、ってここの仕事をかい?」
「呼び捨てできませんから。ええ、ここのを。無理でしょうか?」
「真面目だねぇ。そうだね、今まで何かセキュリティ関係をやったことあるのかい?」
「一応ステーションで警備関係の仕事をしたことはあります。その時に多少セキュリティが出来ることが条件でしたから、それで大体は。あとは神聖幾何学は修めてますし、現在高等数学が途中ですが……」

 話していて思い出す。
 ステーションのイベント警備のバイトは何度かやっているし、そもそもグリッド関係の仕事に就いていたこともある。
 後は何処もそれの応用だろう。
 ついでに新しいバイトをし始めた矢先に、休みを取ったのも思い出す。
 下の件がひと段落したら、そちらに顔を出さなくては。
 それまでに今の状況で動けるようにしなくては。

「分かった。では少し手伝ってもらうこととするよ」

 少し考えてから、トール師はそうおっしゃった。


++++++++++

立春ですね~。
その日に何でこの話がアップになるんだろう……。

エル・フィンが一番最初に出てきたころの話です。
懸命に思い出して思考をたどってみました。

どうもトールさんも、エル・フィンも意識レベルが結構上の方だったらしく、なかなかちゃんと記憶が降ろせなかったという 苦笑

そもそも本当にトールさんとの関係者だったのか分からず、当時トールさんに業務報告をする彼を感知して
「え゛?トールさんと知り合いなのっ!!」
なーんて焦っていたくらいですから、本体のレベルも知れたものですよねw

でもまだ1年たってないんだな~って、思って改めてびっくり。
ええ、1年たたずしてこんな色々な展開が待っているとは、正直思ってもみなかったのでした。


※登場人物などに関しましては「登場人物紹介」をご参照願います 。
また足らなくなってますけど~。
スポンサーサイト

Leave a comment

Private :

Comments

はぁ、上で意識が分かれて覚醒するって‥こんな感じなんですか~

不思議な様な当たり前な様な‥

それにしても怒濤の一年でしたね‥お疲れさまです。
Posted at 2010.02.04 (20:50) by ネコ長 (URL) | [編集]
何かいーっぱい質問したくなりますね~。
もー、興味津々(笑)
ありがとうございました
Posted at 2010.02.04 (21:24) by さと。 (URL) | [編集]
> はぁ、上で意識が分かれて覚醒するって‥こんな感じなんですか~
>
> 不思議な様な当たり前な様な‥

あくまで私の場合は、です。
人によって全然違いますよ~。
クリロズ談話室を1から読むとよく分かりますが。

> それにしても怒濤の一年でしたね‥お疲れさまです。

本当に怒涛の一年で、さらにそれは続行中なんですが。
ほんとーにそろそろどーにかならんのかね……。
Posted at 2010.02.05 (20:43) by たか1717 (URL) | [編集]
> 何かいーっぱい質問したくなりますね~。
> もー、興味津々(笑)
> ありがとうございました

お待たせしました。
質問は答えられるものでよければお答えしますよ~。
未だにわかって無い事も沢山ありますが。
Posted at 2010.02.05 (20:44) by たか1717 (URL) | [編集]
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
09 11
最新記事
FC2カウンター
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
プロフィール

たか1717

Author:たか1717
なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
妄想かもしれないこの話、楽しんで頂けるとありがたいです。

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。