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ただの物語 断片59 神曲2

さて昨日の続きです。

 これはただの物語です。
  さらっと流して下さいね? 

********

 その後はあっという間に宿舎が用意され、神殿に軟禁状態になってしまった。
 軍のほうにはどう連絡が行ったのか、総務の人間が一人直後に来て特別休暇の手続きと各種提出書類を書かされただけだった。
 どちらにしても貧乏くじを引いた当直の者以外は大祭の時期は大型連休となっている。
 それを考慮しても自分が軟禁された期間は通常業務の時期も重なっている。
 どちらにしてもそれが受け入れられるのは助かった。
 せっかくつないだ首をこんな理由で切られるのはさすがに不本意だ。

 そのすぐ後にマスターと少しだけ話す機会に恵まれた。

「謀りましたか?」

 思わず冷ややかに訊ねた。
 そう、呼び出しの署名はこの方になっていた。

「まさか。中央への帰還祝いだよ」
「どこがです」

 思わず不機嫌になって聞いてしまう。
 本来ならば上官にやってはいけないことだ。
 でもここは基地ではない。

「大神殿の祭りに正式参加したとなれば、左遷の噂などは消し飛んでしまうだろうからね」

 そうにこやかに切り返される。
 それに対して少し考える。

(あとはティーラの正装を見たいかと思ったんだけどね? 神殿内の者でないと見られないから)

 いきなり心話が届けられてびっくりする。
 そしてその内容にもだ。
 確かにそうかもしれない……。

「あ、ありがとうございます」

 結局それを言ってその場は終わった。

 だが助からないのはそれからだった。
 大祭で歌う、ということでそれからは精進・潔斎・修行・発声の練習・衣装の用意ということで一日費やされる。
 しかも期間が一週間しかないのでやることなすこと詰め込み大慌ての突貫作業だった。
 衣装が合うものがないということと、自分が正式な神官と認められていないので、神官としての服にそでを通せないということで急遽作ることになったらしい。
 そっちも連日交代で徹夜の作業らしい。

 これらをこなしながらつくづく神殿に入って神官にならなくて良かったと、実感もした。
 碌にティーラと話すこともできない。
 それでもいつも以上に一緒に居る機会があり、それはそれで嬉しかったが。

 
 大祭のメイン神事を明後日に控えたその日、歌の練習に呼びに来たティーラに引っ張られていったのは、神殿の中庭のような場所だった。
 連日バタバタしている神殿内とは違い、木々が植えられたそこは静けさが満ちていた。
 小鳥の鳴き声が聞こえ、木漏れ日が気持ちよく、ここ数日の詰め込み作業に追われて忙しく緊張していたのが、ほっと緩むのがわかる。
 
「アルディアスさまがこちらで、とおっしゃっていたのだけど…」

 そうティーラが言う。

「あちらじゃないのか?」

 気配を感じ、奥の方を示す。
 そちらのほうへ歩いて行くと、そこの一角には石で出来たベンチが作ってあり、そこにマスターが居た。
 そしてもう一人、金茶の髪に宝石のような黄緑色の瞳の女性が寄り添うように立っている。
 どこかで見た顔だな、と思う。

「すまないね、こんなところに呼び出して。神殿内だとバタバタして落ち着かないだろう」

 マスターが何時ものようににこやかに言う。

「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

 そう返す。
 そして隣の女性のことをきこうか一瞬考える。

「こちらはリフィア=ルーテウス、私の婚約者だよ。今回神事を手伝ってもらうことになっている。
 軍の総務課に努めているから、見かけたことがあるかもしれないね。
 リン、こちらがエル・フィン=クレインヴァー少尉。私の部下で先日戻ってきたばかりだよ。
 そして今回の神事の先駆けとなる歌を歌うことになっている。」

 婚約者、と聞いて驚く。
 一体いつの間に?
 そして総務課、と聞いて納得する。
 見た覚えがあるのはその為か。

「……こんにちは。その、婚約おめでとうございます」

 しどろもどろになってあいさつする。
 
「恐れ入ります、ありがとうございます。
 その…大役をご苦労様です。
 当日はどうか宜しくお願いいたしますね」
「ありがとうございます」
「では、始めようか」

 自分たちのぎこちない挨拶に軽く苦笑して、マスターは置いてあった手琴を構える。
 マスターが伴奏をしてくださる、ということらしい。
 そのことに軽い驚きを感じる。
 そもそもこの方は神殿では「大神官」の肩書を持ち、ここの頂点に立つ方でもある。

 そしてここに呼び出されたのも納得する。
 大神官自ら、となってはさらに色々とややこしい問題が持ち上がるのかもしれない。
 手琴を軽く引いて音階調整をしているのを見つつ、ティーラのほうを見る。
 彼女も歌う準備が出来ているようだ。
 こちらもグラウンディングをして準備をする。

 それを見てマスターが前奏を奏で始める。
 そして静かに二人で歌い始める。
 空気の色が変わる。
 場所柄なのか、外だからなのか、声が遠くまで届くのが気持ちいい。
 自然と同調するのもあるだろうし、ティーラとともに歌っているのもあるだろう。。
 
 やはり歌うなら神殿などの建物の中で歌うより外で存分に歌いたいと思う。
 出来ればティーラと一緒に。
 横で歌う彼女を見る。
 木漏れ日の中で一緒に歌うティーラを心からいとおしく感じる。

 静かに歌い終わり、手琴による伴奏も終わる。

 一瞬の空白の後、ぱちぱちぱち、と遠くから拍手が聞こえる。
 どうやら通りがかった神官や巫女、見習い達が足を止めて聞いていたようだ。
 それに気づいて戸惑う。
 軽く彼らに向かって会釈する。
 マスターは手琴を置いて、にこやかに笑う。

「仕上がりは大丈夫そうだね」

 そう言いつつもいくつか貴重なアドバイスをもらう。
 
「ありがとうございます」

 お礼を行ったときに一人の神官がこちらに向かってきた。
 一礼してマスターに向き直る。

「お邪魔して申し訳ございません、大神官様。明日の神事の件でございますが…」
「大丈夫だよ、今こちらは終わったから。じゃあ、当日はよろしく」

 前半はその伝言を持ってきたものに、後半はこちらに向かって言うと、婚約者殿一緒にそちらに向かっていった。

「はい、ありがとうございました」

 二人でそう言って見送る。
 さて、どうすればいいかと思い、ティーラを見る。
 そこに別の巫女がやってきた。
 またあの準備のバタバタに戻るしかなさそうだった。


 大祭当日の控室でみた巫女正装姿のティーラはそれはすごい綺麗だった。
 それだけでもこの一週間の苦労(?)が報われた気がした。
 そう言うこちらは正式な神官服とは違う、でも一見神官服の正装に見える衣装を身に着けていた。
 
 神殿には参拝者がぎっしりと入っていた。
 色々な人のエネルギーを感じる。
 ほんの急造とはいえ神官の修業もさせられた為、今まで以上にエネルギーに敏感になっているようだった。

 でも大切なのは目の前の人ではない。
 この星に歌をささげること。

 ティーラと二人で指示された位置に付く。
 そしてグラウンディング。
 すんだ楽器の音が神殿いっぱいに澄み渡る。

 そして二人で静かに歌いだす。
 祈りの歌を。
 心の底から、すべてを解き放って。
 この世界と星とすべてに同調して平安を祈るの歌を。


 すべてを出し切って歌ったため、控室に戻るとさすがにぐったりと疲れを感じた。

「フィン、素敵だった。ありがとう」

 そう言われただけで十分だと思えた。

********

というわけでしたw
ちなみにこれの2日後位に放免されておりますw
つー訳で監禁約10日間のお話でしたw

ちなみにこの後神殿からのスカウトが軍の方に来るのでした。
いや、全部お断り申し上げましたけどね。

*これの目次などにつきましては「ただの物語について」をご参照ください 。


P.S.
そういえば気付いた人は気付いたでしょうが、Dark Age5でエルスが思い出していたのがこの中庭のシーンでした。
すごく幸せな記憶の一つです。
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Comments

拉致監禁された上こき使われて(笑)ご苦労様でした。でも一緒に歌えて晴れ姿は見れたからラッキーですよね
Posted at 2010.01.17 (16:10) by ネコ長 (URL) | [編集]
聞きたかったな~。
と思いながら読んでいたのですが、
読んでいる間だけ眉間に圧迫感きてました。。。
Posted at 2010.01.17 (16:24) by *ひなた* (URL) | [編集]
ラヴラヴ~
2人ともかわいい~~~
Posted at 2010.01.17 (16:48) by なが (URL) | [編集]
> 拉致監禁された上こき使われて(笑)ご苦労様でした。でも一緒に歌えて晴れ姿は見れたからラッキーですよね

まあ、そう言う見方が殆どですねぇ……。
あと「作戦」の気分転換できましたから、それも。
Posted at 2010.01.17 (21:03) by たか1717 (URL) | [編集]
> 聞きたかったな~。
> と思いながら読んでいたのですが、
> 読んでいる間だけ眉間に圧迫感きてました。。。

ではまた何時かの機会に 笑
ちなみになにも仕込んでないんですよっ!!
何で圧迫感???
Posted at 2010.01.17 (21:04) by たか1717 (URL) | [編集]
> ラヴラヴ~
> 2人ともかわいい~~~

可愛い…………。
何か微妙な感じだ。
Posted at 2010.01.17 (21:05) by たか1717 (URL) | [編集]
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なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
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