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ただの物語 断片58 神曲1

さてあの「作戦」が終わって、「出立」したの後での中央での話です。

 これはただの物語です。
  さらっと流して下さいね? 

********

 中央に戻ってから今回の作戦のついての報告書や、その他の書類の整理が先に待っていた。
 その整理が終わった後に特別休暇があるらしい。
 
「先に向こうで休暇を貰った方が良かったな」

 とぼそりとつぶやいたマルスに苦笑して見せる。
 確かに特別休暇が大祭の日に当たっていた。

 そもそもこの日に休暇を取るには、競争率が高い。
 基本的に大型連休になる、と言っても軍ではやはり半数以上の人間を休ませる訳にはいかず、常に高倍率になり、調整が大変だと言うのを聞いたことがある。
 だが自分にとってはあまりこの日に休暇を取っても、ツインに会えないし、親戚連中に会う気にも慣れないので逆に暇を持て余してしまう。
 基本的には出来るだけ休暇は大祭後にずらして取るようにしていた。
 ただ大祭後に別の作戦が待っていると言うのが分かっている以上、その休暇が取れない可能性の方が高い。
 それを思うと今度はいつツインに会えるのだろう。

 そんな中、マスターより緊急に神殿のティーラを訪ねるよう、指示が来た。
 いきなり、しかも大祭前に神殿に呼び出されて驚いた。
 普段大祭前は巫女であるティーラに会うことは出来ない。
 準備で忙しいのもあるが、潔斎を必要としているというのもある。
 なので逆に不思議に思って慌てて軍服のまま、指示に従い会いに行った。
 
「お願い、フィン。歌って」

 会った途端にそんなことを言われてこっちは驚いた。

「あの?ティーラ??」
「歌の担当の神官様がいきなり体調不良で声が出なくなってしまって、代役が必要なの。他の誰にも歌えなくて」
「でも普通はほかの神殿から呼ぶんじゃないのか?」

 泣きそうな声で言われてさすがにびっくりしたが、一応そう聞いてみる。
 すると左右に首を振る。

「他の神殿も代理の人が立てれないみたいで間に合うかどうかが……」

 基本大神殿のほうがメインのため何かあると地方から呼ぶのが当たり前だ。
 よほどのことがない限り大神殿の要請を地方が断ることは出来ないと聞いているのだが…。
 そもそも大祭で歌うというのはかなりの名誉だ。
 やりたい人間はたくさんいるだろうに。

 そんな疑問が顔に出たかもしれない。
 ティーラは手にしていた楽譜を差し出した。

「この曲なの。祭典の一番最初に歌う……」

 手にとって最初の一枚をざっと見た段階で、思わず眉根が寄る。
 知らない曲ではない。
 しかしかなりの難曲だった。

 ただ歌うのがむずかしいとかいう問題ではない。
 歌い手の技量によっては祭典そのものを駄目にしてしまうかもしれない大事な歌だった。
 さらに全部に目を通すだけでも、人によっては意識が飛ばされてしまうかもしれない力のある曲だった。

 これを歌えと?

「とりあえず歌ってみていただけませんか?」

 いきなり他の方向から声が届く。
 そちらを見ると神官の一人がこちらを侮っているのがわかる様子で見ていた。

「ティラウェリア巫女は貴方にその歌が歌えると言っておりますが、私は信用できません。技量もさることながら神官の修業をしていないのですから」
「そう言うのでしたら、貴方が歌えばいい」

 思いっきり冷たくそう突き放す。
 するとムッとした様子をその神官は見せた。
 
「出来ればそうしたいのは山々です」

 つまりこの神官ではこの役目を果たせないらしい。

 ため息をついてまずグラウンディングをする。
 それから楽譜を全部に目を通す。 
 読んだだけでメロディなどが自分の中に入ってくる。
 気を抜くと変な風に同調しすぎて意識が飛ばされかねない。
 こんな曲は見たことがない。
 同時に判断をする。

 歌える。
 心配があるとするならば、その前に本気で歌ったのが数年前であることだ。

「どこで歌ってみせればいいですか?」

 心配そうなティーラを見て、そのあとにその神官に訊ねる。

「こちらへ」

 言われてついていくとそこは拝殿だった。
 大祭を前に飾り付け打の準備だので少しバタバタしている。
 同時に部外者の軍服のままの、一目で軍人だとわかる人間が入ってきたことに怪訝な雰囲気が広がる。
 穢れを気にしているらしい。

「そちらに立って歌ってみてください」

 指示されたところは拝殿の真ん中だった。
 多分当日はそこで歌うことになるのだろう。
 同時にそれがある種の喧嘩を売られていることにも気づく。
 楽譜を見る限り、本来伴奏が着くはずだ。
 練習もなし、伴奏もなしで初見の曲を独唱をしろ言外にも言われている。
 いくら毎年歌われて神殿に行けば必ず聞いている曲とはいえ、それはあまりにも無謀な話だった。
 しかもこれで上手くいかなければ、その矛先がティーラに向かうであろうこともわかった。

 軽くそいつを睨んでからそちらに立つ。
 同時にここがすべての力の発信源になることにも気づく。
 下手な歌い手がここで歌えば、その力によって潰れることも予想がついた。
 確かにこれでは神官としての修業は必要だろう、本来は。
 つまり完全な嫌がらせだ。
 中途半端な歌い手をつぶそうという意図も見える。

 思わず目を眇めてその神官を見る。
 絶対零度、と言われたその視線にその神官が固まるのがわかる。

「自分のペースで初めていいですか?」

 さらに冷ややかに言い放つ。
 それに我に返りながらも声が出ないらしく、こくこくとうなづく。
 近くで心配そうにティーラが見ている。

 楽譜を持って歌いやすいような体制をとる。
 同時に再度グラウンディングをして強化する。
 そして喉にかけた封印を解く。
 感覚を確かめる。
 100%では歌わないほうが無難だろうな、と思う。

 そしてゆっくりと静かに歌いだす。

 祈りの歌。
 すべてを光に平安にかえすために、この星に捧げるための歌。
 式典の始まりを告げる歌を自分が歌うことになるとは思ってもみなかった。
 しかも軍に所属する自分が平安を歌うとは皮肉だと思った。

 同時に自分の中が解放されるのも感じる。
 能力も発動する。
 空気が壁が床がありとあらゆるものが発光し、光が増す。
 しかしここは拝殿であり、神官が何人か準備のためとはいえいる。
 自分の能力が発揮されても多分問題はないだろう。
 抑えきれなければ困るのは彼らだから。

 拝殿に声が広がる。
 同時にどれくらいのレベルが必要なのかを推し量る。
 祭典では人が入るために100%の力を出さないといけないだろうと思う。
 ただそれをして大丈夫なのかを見極めないと。

 徐々に声量を増していく。
 声の響き具合が気持ちがよかった。

 歌の最中に神官たちがあわてててバタバタと動き回るのを感じる。
 光が増して暴走状態になりかかっているために慌てているようだ。
 ああ、そうか。
 生家近くの神殿ではないため、この能力を知っているのはティーラだけだったか。

 歌いながらそう思う。
 この歌を途中でやめることはできなくはないが、逆にそのほうが危ない。
 そんなことして平気なのはこの歌の力を推し量れない者たちだけだ。
 始めたら最後まで歌わないといけない。

 そこに女性の歌声が混じる。
 ティーラだ。

 もしかしたら最初から小声で一緒に歌いだしたのかもしれない。
 そうしないと危険なのが分かっていたかもしれない。

 光の暴走とも見える発光が彼女の声量が増すにつれ落ち着き、本来の歌の意図する方向に動き始める。

 こちらもティーラの声量に合わせて少し下げる。
 ハーモニーを作り出し、歌いあげ、そして終わる。

 一瞬後に、静まり返った拝殿の隅からパンパンパンと拍手が聞こえた。
 そちらに視線をやると、最高位の神官服に身を包んだ上司が微笑みながら拍手をしていた。
 それに軽く黙礼をし、そして呆然としている神官のほうへ歩いていき、そして冷ややかに聞く。

「これでよろしかったですか?」

 機械的にうなづくのを見て、ひそかに嘆息する。
 話になってない。

 周りを見ても他の神官たちは席を外したようで、どうしていいのか分からない。
 ティーラにどうすればいいか問おうとした時に、バタバタと音がして一目で高位と分かる神官とその周りのモノがやってきた。

 その後はあっという間に宿舎が用意され、神殿に軟禁状態になってしまった。


********

別名、神殿拉致監禁事件、です 笑
こっちの意思は取りあえず無視されました orz
神殿側も必死だったんでしょうねぇ……。

時期的には大祭の1週間くらい前のお話です。
そして続きます。

*これの目次などにつきましては「ただの物語について」をご参照ください 。

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Comments

拉致監禁されたっていうから誘拐事件がらみなのかな?と思ってたら…そりゃ、神殿も必死だったんでしょうねぇ~(笑)でも気持ちよさそうに歌ってますねお二人のデュエットも聞いてみたい見事だろうな
Posted at 2010.01.16 (15:14) by ネコ長 (URL) | [編集]
とりあえず無視しましたw ←

でも、結果的によかったでしょ? 笑
Posted at 2010.01.16 (17:23) by さつきのひかり (URL) | [編集]
> 拉致監禁されたっていうから誘拐事件がらみなのかな?と思ってたら…そりゃ、神殿も必死だったんでしょうねぇ~(笑)でも気持ちよさそうに歌ってますねお二人のデュエットも聞いてみたい見事だろうな

わははははっ!
ご心配おかけしましたww
でもどう見てもこれ拉致監禁でしょっ!
神殿から出られなくなっちゃったんだからっ。
Posted at 2010.01.16 (20:08) by たか1717 (URL) | [編集]
> とりあえず無視しましたw ←

一番仕事がどうか知っていたはずなのにぃ。

> でも、結果的によかったでしょ? 笑

……ええ、まあ ←複雑
Posted at 2010.01.16 (20:09) by たか1717 (URL) | [編集]
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参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
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