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紅緋古譚 35 最期の戦場

 出撃前に意外な人物に出くわした。

 “狼”だ。
 しかも制服を着ている。

 更にたまたま通りがかったと言うよりか、おれを待っていたような感じだった。
 こちらを認めると、奴はにっこり笑った。
 油断のならない顔で。

「よお、ルーちゃん、これから出撃?」

 分かり切ったことを聞く奴だ。

「見たとおりだ」

 そう言って着ているバトルスーツと得物を示す。
 
「相変わらずだねぇ」

 そう言っていつもの通り笑った。
 しかし何かがおかしかった。

「何かあったか?」

 気になり聞く。
 が、奴は笑ったまま「さあね」とだけ答えた。

 思わず怪訝な顔になる。

「たまには出撃の見送りも良いでしょ?」

 そう言う。
 らしくない。

「大丈夫かお前。なんか変なものでも喰ったのか?」

 思わずそんな事を言ってしまう。
 今まで何度も作戦で出撃したが、奴と知り合ってからわざわざ見送りに来た事など皆無だ。

 奴もわざわざ来るほど暇な訳じゃない。

「あのさ、恋人に『行ってきます』のキスの一つでもしたらどう?」

 そんな事を言い出す。

「誰が恋人だ、馬鹿か、テメーは」
「え~、でも俺の女なんだから、似たようなものでしょ」

 笑って手招きをする。
 まったく、おれが奴にとっては、たくさん関係を結んでいう女の一人でしかない、のはおれが良く知っている。

 何があったか分からないが、賭け事でもしているのかもしれないな。
 奴が居なくなったら面倒なことが増えるのは分かっていたので、それなり付き合うつもりで側に行く。

 ため息をひとつついてから奴の顔をまっすぐに見る。

 と、思った以上に真剣なまなざしにぶつかった。
 奴特有の薄い青い瞳はまるで笑っていなかった。
 思わず息をのむ。

「ルージュ」

 静かな声で言われて、顔を挟まれる。
 軽いキス。
 らしくない。

「ルージュ、ちゃんと生きて帰っておいで」

 そう言われた。
 間近から覗きこまれ、真剣なまなざしで。

「生きて帰ってきたら、何か良いことあるのか?何かくれるのか?」

 冗談めかして聞いてみる。
 こういう真剣なのは苦手だ。

「そうだねぇ、ルーちゃんの好きな甘いケーキを山盛り用意しておくってのはどう?」
「…………そうだな、10日分は用意してもらおうか」
「そんなに食べたら太るぞ?」
「どうせ訓練で消費される。大丈夫だ」

 そんないつものかる愚痴を応酬をする。
 こいつのらしくないのを見ていたくなくて。

「まあ、確かにちょっと太った方が抱き心地が良くなるから、それも良いかもねぇ」
「悪かったな」
「悪くないよ。今のルーちゃんも可愛いよ」

 そう言う奴はいつもの通りに見えた。
 それで少し安心する。

「じゃあ、おれは行くからな。お前といつまでも遊んでられない」
「ああ、行っておいで」

 おれは向きを変えて歩き出した。
 ふと、気になり振り返る。
 奴は先ほどの場所から、こちらを見ており、振り返ったの気付いて手を振った。
 それを無視してまたまっすぐにおれは歩きだした。



 その作戦は。
 ある種の地獄だった。
 切っても切っても、痛みを感じてないように襲い来る敵。

 いくら斬るのが好きでも、血が飛び散っても、歩みと襲撃を辞めないそれらに疲弊していった。
 まるで敵は人としての意思が完全に無いみたいだった。

 さすがに息が切れる。

 撤退命令がない。
 おかしい。
 無視することはあっても、聞えないことは無かった。
 通信機が壊れているのか?

「ルー!」

 誰かが叫んだ。
 
 おれはバランスを崩して遅れをとった。
 集中も切れる。

 その時。
 深く敵の刃がおれをえぐった。
 
 そして腕が、おれから離れて剣を持ったまま落ちた。
 
 あ、死ぬんだ。

 そう思った。

 最後に見たのは。
 空が青く澄んで高く、雲が白くてきれいだった。

 青と白も綺麗だったんだな。


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なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
妄想かもしれないこの話、楽しんで頂けるとありがたいです。

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