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ただの物語 断片41 叱責

えーとぉ。
エル・フィンは一度上司にすごい怒られて、周りを絶対零度に凍結させたことがあります。
そのお話。

これはただの物語です。
  さらっと流して下さいね? 


******


 頭の包帯が取れたので久しぶりに出勤をした。
 そもそも大した怪我ではないが、頭だというだけで慎重に取り扱われ、入院までさせられていた分、体が鈍っているような気がする。
 一応自宅療養になってもこの大げさな頭の包帯のせいで、さすがに出歩くのは憚れた。

 ただ足の骨折だけはやはり文句なしの大けがだろう。
 だが補助魔法がある分、少し引きずるが歩けないことはなかった。

「エル・フィン、もういいのか?」

 ドアを開けたとたんに声が飛んできた。

「怪我がひどかったんだろう。もっと休んでたらどうだ?」
「大げさな。内勤業務には支障はない。書類はどちらの手でもできるしな」

 このときばかりは自分が両利きなのが助かる。
 これが片手で利き手のほうだとしたら、内勤業務さえできず本当に部屋でこもっているしかない。

 一応上司の方に目をやるとちょうど誰かと話をしているところだった。
 ちらり、とこっちを見たので目礼し自分の机に座る。

 案の定机の上には未決済の書類がたまっている。
 代行してもらうこともできるものはさすが置いてなかったが、そうでないものは嫌でもたまってしまう。

 端末を調整して立ち上げて、書類に集中し始める。

「あの……」

 不意に声をかけられて目を上げるとそこには****が立っていた。
 彼は軽い擦り傷ぐらいで済んだので、すでにもう治っているようだった。

「本当にすいませんでした、私がぐずぐずしていた為に……」

 そう言って頭を下げられる。
 入院中に見舞いに来た時もものすごく後悔しているのがわかる有様で、あまりのことに思わず見舞いに来るなと言ってしまったくらいだ。
 なんとなく居心地が悪い。

「気にするな。こちらの判断も甘かったからお互い様だ」
「しかし……」
「怪我したのはこちらのミスだ。****が気に病むことではない」
「ですが」

 何を言っても更に言い募ろうとすることに、思わずイラつく。

「いつまでもそうやって後悔するくらいなら、もっと鍛錬して他に迷惑がかからないように気をつけろ。これ以上ごちゃごちゃ言われるのも迷惑だ」

 そう言い放って書類に目を戻す。
 だが彼もそう簡単に引き下がろうとせず、そこに立っている。

「しつこいっ!何時もまでもそこに立っているな!目障りだ」

 思わず冷たい言い方で、思わず睨んでしまう。
 一瞬、部屋が静かになったような気がする。
 さすがに彼はもう一度「すみません」と言って離れていった。
 
 ようやく落ち着いて書類に目を戻す。
 何度も謝るのは気持ちとしてわかるが、こちらとしてはいい加減にしてほしいと思わざる得ない。
 そのことに軽く嘆息して、見ていた書類を改めて最初から文面を追いなおす。
 と、その時書類がふと手の中から消えた。

 思わずむっとして見上げると銀髪の上司がその書類をつまんでいた。
 珍しく表情がなく、穏やかな深い海を思わせる瞳が凍てつく氷の海さながらに銀青色に変わっていた。
 高い位置からこちらを静かに冷やかに見おろしている。
 まとう雰囲気も見たことのない冷やかな凍てつく炎のようだ。
 訳が分からないままこちらも無言で睨む。
 なぜこんな風に見られるのか理解できない。
  
 し…ん、と周りから雑音が消えた。
 
 全員が全員固まったまま、ハラハラしながら、こちらをちらちらとみているのを感じる。
 まったくこれくらいの睨み合いで固まる周りの反応が理解できない。
 普通に仕事をしろ!と頭の片隅で考える。

 突如として内線の呼び出し音が響いた。
 一瞬全体がびくっと反応するが、誰一人出ようとしない。
 むなしくコールを続ける音が静まり返った室内に空々しく響く。

 その音はかなり長い間続いたが、諦めたようになり始めと同じように突然切れた。
 どこからかわからないが、後でクレームが来ることは間違いない。

「書類を返していただけますか?」

 静かにそう切り出す。
 このまま睨みあっていても埒があきそうになかった。

「……まだ静養期間だと思っていたがね」
「デスクワークには何の問題もありません」

 そう答えるとさすがに室内の空気が少し和らいだのを感じる。
 遠くの方からゆっくりと動き出す感じだ。

 しかし上司の方は一向にその冷たい雰囲気と視線を和らげる気配はなかった。
 そのことにいささかの疑問を持つ。

「では先ほどの会話は?」
「………」
「その姿で出勤することで部下の罪悪感と後悔を刺激することは考えなかったのか。ただでさえ気に病んでいるのに」

 冷やかに言われて背筋がぞっとした。
 そう、この上司が何の理由もなくこのような厳しい態度に出ることはないのだ。

「それに加えてあの言い方はどうかと思うが、それに関して何も思わないのか」
 
 思わずやってしまった、先ほどの無意識な対応がさらに****の気持ちを傷つけたとしたら、それは最悪だった。
 それに気づいて更に寒気が走る。

「なぜ呼ばなかった」

 さらに静かに声が内側で響く。
 
「危険な任務だから、何かあれば余裕のあるうちに私を呼べと言っておいたはずだ。いくら下のためとはいえ、大怪我をして倒れるまで、なぜ呼ばなかった。彼が他の隊員への救援を呼ばなければ、今頃君は死んでいた」

「……すみません」

 視線をはずして静かに謝罪する。
 確かに自分ひとりで孤立した****のフォローが出来ると踏んだあたり、判断が甘かったと思う。
 あれは一人でなく連携したほうが良かったのだ。
 だかあのときはそれがベストだ判断した。

 結果として大けがをし、そのことで敬愛する上司をひどく心配させたことを知り、深く恥じた。

(共振するティーラのことは考えたのか?)

 いきなりの心話に一瞬もう一度上司を見やる。
 考えなった、というには嘘になる。
 動けなくなったとき、真っ先に浮かんだのは彼女のことだったから。

 あの時、出来るだけ忙しい上司の手を煩わせずに済ませたい、という意気込みが逆に自分のみならず仲間達も危険にさらしていたのだ。
 その事に今更ながら改めて気づいてぞっとする。

「……申し訳ありませんでした」

 不自由ながら立ち上がって頭を下げる。
 今更ながら、改めて顔を上げる気になれなかった。
 上からため息が聞こえた。

「よろしい。では今日はもう帰るように。医師の診断がつくまで出勤は無用だ。この書類は私が処理しておく」

 そう上司は言うと肩に暖かなやさしい手を置いた。
 その暖かさに自分の中に安堵が広がる。
 上司の軍靴がくるりと向きを変え、遠く歩み去ってゆくまで、ずっと床を見つめていた。


 職場を辞して廊下に出る
 一度****には声をかけて、先ほどの対応を誤っておかなくてはいけない。
 だが彼は訓練に出てしまったらしく、どこに行ったかも不明だった。
 仕方がない、後で端末で連絡でもしておくか。
 このままうろうろと歩くわけにもいかず、廊下を寮に向かって歩き始める。
 
 そこにセラフィト様が通りかかった。
 
「ようエル・フィン。もういいのか」
「いえ、これから寮に帰ります。あの方に叱られてしまいました」
「そのなりじゃあなあ。無理しないで、気をつけて帰れよ」
「ありがとうございます」

 向こうはいつもの穏やかな叱責だと思ったらしく、軽い調子で流していった。
 後であんな風に怒らせたと知るとまた何か言われるんだろうな。

 そう思うと何となく苦笑が浮かんだ。


 後日その時のことを聞いたらしいセラフィト様は

「奴を本気で怒らせただと? なんて命知らずな」

 ととても驚き、珍しいもののように眺められた。


**********

ということがかつてありました。
ちなみに本人はそれほど怒らせた、と思っていないのが怖いところです。

セーラムさんにこの件を聞いたら
「何でそんなに自覚が無いんですかっ!」
と逆に怒られました

……本体は思い出した時に
「ぎゃ~~~~~~~~~~~!!!
って思いましたけどねぇ。


*これの目次などにつきましては「ただの物語について」をご参照ください 。
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Author:たか1717
なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
妄想かもしれないこの話、楽しんで頂けるとありがたいです。

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