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水晶薔薇庭園館綺譚14 仕事(8月中旬くらい?)

 手にして読んでいた書類をいきなり取られてそちらを見る。
 セーラムだ。
 滅多にそんなことをしないのでちょっと怪訝に思う。

「セーラム?」
「もうしばらくしたら帰る、って言ってませんでしたか?それからどれだけ経ったのかご存知ですか?」

 静かに言われて視線を外し、時間を確認する。
 確かにシフトの時間は終わったが、優先順位の高い書類があったため、少しだけ残業するつもりだった。
 だが確認すると確かに「少し」という範囲を超えている。

「帰ってください。続きは私がやります」
「しかし、それは無理だと思うぞ」

 とられた書類を指してそういう。
 言われたセーラムはざっとそれに目を通し、眉を寄せる。
 こちらが言いたいことがわかったようだ。

「でもこちらも統括から隊長をいい加減帰すように言われてます!これはクリロズに転送しておきますから、とりあえず帰ってください。
 そろそろ強制休暇をとらせようかと手ぐすねひいて待っている人もいます」

 言われてちらりと統括のほうを見ると、目で早く帰るように促してきた。
 どうやらかなりこの件に関しては怒っているようで目の色がいつもの穏やかな色ではなく、冷たい色に変わっている。
 下のやり取りは知ってはいたが、さすがにちょっとこれはまずいかもしれない。

「こちらも下手に休まれると困りますし、でも倒れられるとさらに困るんです。そもそも下の疲労が抜けないのも貴方が原因でしょう」
「下のはただの夏の……」
「いいえ、貴方が疲れているからです!」

 セーラムがここまで強気に言うとなるとさすがにこちらも考えざる得ない。
 普段セーラムはここまで強引に決めつけるような言い方をするやつではないのだ。

「とにかくクリロズに帰ってください。そちらの端末に急ぎの仕事は転送しますから」
「わかった。とりあえず帰る」

 そう言って書類を整理して立ち上がる。
 するとセーラムはその書類をすべて引き取って自分の机に置いた。
 さらに手にしていた分はフィリアに書類を渡して何事かを言うと

「では、ポータルまでお送りします」

 と言い出した。

「そんなことはしなくていい」
「残念ながら、上の方からちゃんとクリロズに帰るのを見届けるように言われてます。たまに帰っていないそうですよね?」

 セーラムはそう言うとにっこりと笑った。


 クリロズに帰るとそこは夜時間だった。
 とりあえず風呂に行き、その後改めて端末を立ち上げた。
 セーラムは言ったとおり急ぎ分を転送してきていた。
 彼もざっと目を通し割り振れるものは他に振っているはずだが、やはりどうしてもそうもいかないものも出て来る。

 やはりせめて一人くらい増員したほうがいいのかもしれない。
 そうすればセーラムにこちらの仕事の手伝いを任せることが出来て助かるが、しかし領域の特殊性を考えるとなかなか増やせないのが実情だ。
 先日も一人断られたばかりだ。

 領域の特殊性と仕事の特殊な多様性。
 この二つの条件を満たす人材はかなり少ない。
 どこかの学校で将来性のある人を探したほうがいいのだろうか。

 ため息をつくと同時に扉がノックされたのに気がついた。
 遠慮がちなその音にレオンだということがわかる。

 最近レオンはこちらが忙しいのを気遣ってか、あまり部屋に来なくなった。
 たぶん学校の勉強も忙しいのだと思う。

 学校でも剣の実技は初級ではレベルが違いすぎてひとつ上のクラスを受けているため、めった会うことが出来なくなった。

 しかも仕事が忙しいために、こちらに戻ってきてもタイミングが合わず、どれくらいぶりに会うことになるのだろう。

「入っておいで」

 そう声をかけると遠慮がちに顔をのぞかせる。
 まるでこちらがいるのを確認するように視線を外さない。
 後ろ手に扉を閉めると、こちらに来ることなく扉の所で躊躇している。
 珍しくなかなか次の行動に出ないレオンに声をかける。

「どうした?」

 そう聞くと意を決したように口を開いた。

「あのね、エル・フィン。僕、おおきくなったら天使エリアで仕事をする。エル・フィンと一緒に仕事をする」

 真剣な表情でそう宣言するレオンに思わずうれしくなる。
 下でそのようなやり取りはしていて知っていたが、直接こうやって伝えてもらえるのはまた違う。
 しかしそれが今のレオンにとって大変なことは分かっていた。

「じゃあよほど頑張らないと、大変だぞ」

 思わずそんなことを言ってしまう。
 だが真剣にそれを聞いてレオンは言った。

「うん、がんばるよ」

 そう言うと一度視線を外した。
 そして何かを躊躇している。
 何か言おうとして、またやめて・……。

 何をためらっているのかがわかり、思わず微笑んでしまう。
 以前なら何も言わずに黙って行動していたのに。

「いいよ、おいで」

 そう言うとほっとしたような顔をしてこちらに足早に歩いてくる。
 走らなくなった分、大人になったのかもしれない。

 でもその勢いのままに首に抱きついてきた。
 こちらもレオンの体を抱きしめる。
 その手の中の感触に思わずホッと気持が和らぐ。

 こうやっていつまで甘えてもらえるかわからない。
 早く大人になって横にいてほしいとも思うし、でも同時にいつまでも子供のままで甘えてほしいと思っている自分もいる。

 ティーラ以外にこうやって誰かと触れ合って、本当に気持が満たされるなどとは思ったことがなかった。

 満足したのかゆっくりとレオンが下を向いて離れていく。
 恐る恐るこちらをうかがうのを微笑みかすと、ほっと安心したように笑った。
 
「おやすみ、エル・フィン」

 はにかんだようにそうレオンが言った。

「おやすみ、レオン」

 そう言って頬にキスをすると、うれしそうに笑って部屋を出て行った。

 わずかな時間だったが、疲れていた気持ちと体が不思議と回復していた。
 こちらに戻ってきてよかったなと思う。

 セーラムとトール師に感謝して、改めて仕事と向き直る。
 手早く急ぎの用件を片付けて、早めに休むこととしよう。
 そして朝は一緒に食事をしようと心に決めた。


~・~・~・~・~・~

つーわけでエル・フィンヴァージョン。
mixi持っている方はかほりさんところのレオン君版と読み比べると面白いかもしれない。

で、ここから発展して実はとっても、おとろちぃことを思い出してしまいました orz
勘弁してよ~~~~っ!!

いや、昔々のことなんですけどね。
読みたい人居ますか?


※登場人物などに関しましては「水晶薔薇庭園館綺譚について」をご参照願います
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なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
妄想かもしれないこの話、楽しんで頂けるとありがたいです。

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