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このブログについて&いらっしゃいませ

このブログは私:たか1717が「なに見え遠足」や、「クリロズ」「ステーション」などで見聞きした話『水晶薔薇庭園館綺譚』と過去の思い出しの話『ただの物語』などを書かせていただいているブログになります。

一応擦り合わせなど出来る場合は、擦り合わせの上、そうでない場合は独断と偏見で載せていただいてます。
その場合は、半分妄想かも知れないので、そこは十分承知の上でお楽しみください。

なお、文中に出てくる横文字の人物に関しましては、「登場人物紹介」をご参照ください。


 紅緋古譚については、一つの物語として読んでいただけると幸いです。

Dark Age 11 出会い4

 朝になり、授業のため学校へと歩く。
 色々と取れる教科を詰め込んだ為、他のクラスメイトが授業がない時間帯も講義を受けていた。

 昨晩の事を考えると、あいつはもう話かけて来ないだろう。
 ホッとする反面やはり嫌な気持ちが抜けないのは、あんな終わりかただと思う。

 自分のサイキックが原因で人間関係が壊れるのは、これが初めてじゃない。
 だが自分でコントロール出来ない分、嫌な思いはつのる。
 ここまで自分の能力がコントロール出来ないのは、いくつかの転生の中でも記憶が無い。
 大体物心が付いたくらいから、徐々に制御出来る様になっていた。

 学校に着いて顔見知りと挨拶を交しながら、まずはロッカールームに行き、必要なものを取り出す。
 溜め息と共にロッカーの扉を閉めて鍵をかける。

「何悩ましげに、溜め息ついてんの?」

 いきなり声をかけられて驚いた。
 あいつがロッカーにもたれてこちらを見ていた。
 思わずマジマジと見てしまった。

「何見惚れてるの?俺ってそんなに良い男?」
「馬鹿?」

 思わず間髪入れずに突っ込んだ。
 慌てて焦ってみたら、奴は軽く微笑んでいた。
 無理しているようには見えない。

「相変わらずキツイな〜、エルスは」
「悪いか」
「いや、それっくらいで良いと思うぜ」

 にこやかに何処か嬉しそうに言った。
 何を言って良いか分からず、歩き出す。
 奴はそれについて来た。

「なあなあ、今日のお昼暇なら一緒に食べない?」

 今までと変わらない口調で、今までと変わらない様子でしゃべる。

「お前、昨日の今日で良く平気だな」

 思わずそう言ってしまう。
 すると奴は目を見開いた。
 訳が分からないと言った風情だった。

「普通はあんなことがあったら避けるだろ」

 そう言うと、ああ、と返事をした。
 俺は奴の顔が見れずに、前だけを見てた。
 だから奴がどんな顔しているかわからなかった。

「俺があれくらいの事でエルスの事、嫌いになる訳がないだろ。
 元々悪ふざけしたのは俺の方だし。
 それにそんなことしたら、エルスが泣くでしょ?」
「だれが泣くか。せいせいする」

 条件反射的に言ったら奴は笑った。

「うん、そう口で言いながら、平気なふりして、内面すごい傷ついて泣くでしょ。
 俺はそういうの嫌だしね。
 それに一人くらい、俺の事情を知っている奴がいてくれた方が、良いかなってのもあるんだ。
 それがエルスなら、絶対言いふらしたりしないだろ?」

 優しい口調でそう言われて、黙る。
 確かにそうだけど。

「だからそれを盾にどうこうって気持ちもないし。
 同情して欲しい訳でもないんだ。
 知ってもらって、ちょっと気が楽になったってのもあるんだ。
 後は今までどおりに話をしてくれたらOKなんだけど、どう?」

 言われて少し考える。

「……同情しないぞ」
「うん、して欲しい訳じゃないし」
「今までどおりでいいんだな?」
「そ、それでいいよ。俺も昨日のあれがあったからどうこうってことはしないから。
 それでいいでしょ?」
「口説かれても堕ちないぞ」
「それは嫌だなぁ…・・」

 最期の一言だけ情けなさそうに言われて、思わず噴き出す。

「あ、ようやく笑った」

 嬉しそうに言われて、ちょっと複雑な気分になる。

「……そうだっけ?」
「そうだよ、いつも俺と話す時は硬い表情でさ〜。
 それでも今日はいつにもまして沈痛だったし」
「……生まれつきだ」

 思わず憮然として言う。

「そんな訳ないでしょ。
 で、今日の昼、学食で一緒に食べない?」

 いきなり話題を変えて、いつものように誘ってくる。

「何でお前と、嫌だね」

 あっさりといつもの口調で言う。

「そういうと思った。
 でも他の奴らは午後からの授業だろ?
 なら一人だと寂しいじゃん、迎えに行くから、待っていてよ」
「やだね」
「じゃあ、俺も授業だから、待っていろよ」

 そういうとアーサーは逆方向に走って行った。
 アイツは何処で授業何だ?

「嫌だって言ったろっ!」

 怒鳴り返すが、聞えているかどうか。
 思わずため息をつきながら、教室に向かう。

 ふと、気持ちが軽くなっているのに気付いた。

 何か不都合があっても、俺の制御不能な能力を知っても、離れていかない人がいる。
 それがなんか嬉しかった。

 何かあれば避けられて終わる。
 そんな人ばかり見てきた。

 もっとも相手がアイツなのはやっぱり問題かも。
 そう思いながら、教室の扉を開いた。

Dark Age 10 出会い3

 飲み会は結構な盛り上がりを見せた。
 未成年のため酒は飲めなかったが、それでも十分に楽しく話せたし、料理もおいしかった。
 
 魔法学部だけあって、魔法の話になるとみんな真剣だったし、楽しみながらも真面目だった。
 また普通の教授のうわさ話や、裏話や、テスト対策まで、先輩も含めまぜっかえしながらも楽しかった。

「エルス、お前そろそろ先に帰った方が良くないか?」

 そう言われるまで時間を気にしなかったから、どれだけ楽しかったんだろう。

「ああ、確かにまずいや」
「なんだよ?何でそいつは先に帰るんだ?」

 魔法学部の2年生の先輩が不思議そうに聞いてきた。

「俺、飛び級してるんで、まだ夜遅い時間歩くと年齢的に補導されるんです」

 苦笑してそう答える。
 実際に高等学校生が夜遅く歩いても、そんなに危険は少ないし、町の治安は悪くなかった。
 ただ最近は軍が勢力を伸ばしつつあるから、そろそろ物騒になるんじゃないか、という話はあった。

 一応変なことに巻き込まれないようにと、目を光らせている専門員が居るし、そう言う人に掴まると後が面倒だった。
 
「お前ひとり歩いた方が、危なくないか?」
「はい?」

 先輩は俺をしげしげ見て、そう言った。
 意味が良く分からない。

「先輩〜、だからこそ早く返さないと」
「そうかもな。じゃあ、気をつけて帰れよ」

 クラスメイトの助言?を受けて、そう送りだされる。
 訳が分からないまま、上着を着て、店を出て歩き出す。

 夜遅く、と言っても始まったのが午後6時ごろでそれから4時間余りだから、まだ夜10時くらいだった。
 まだまだ人が多く、明かりも多い。
 これくらいなら、下手したら塾などに通う高等学校生がまだ歩いている時間だった。
 あまり警戒しなくてよさそうだった。

 その時、後ろから駆け寄る足音が聞えた。
 
「エルス、待てよ」

 追い付いて肩を叩かれるのと同時に、声が聞こえた。
 あいつだ。
 飲み会に来ていたが、他の奴らと楽しそうに喋っていたので忘れていた。

「何の用だ?」

 思わず冷ややかに聞く。

「送って行くよ」
「何で?」
「やっぱりこういうところで、ポイントは稼がないと、ね」

 にっこり親しみを込めた笑みを浮かべてそう言う。

「俺は女じゃないぞ?」
「分かっているよ。でも心配で俺がやりたいんだ」
「……勝手にしろ」

 そう言って無視して歩きだす。
 それでもアーサーはニコニコしたまま、俺の隣に来て一緒に歩きだした。

「エルスは何処に住んでいるんだ?」

 しばらくしてそう聞いてくる。

「寮」
「何処の?」
「デルス地区」
「ああ、あのレンガ造りのわりとアンティークな場所ね」

 直ぐに出てくるあたり、こいつは本当に色々と良く知っている。

「中身も結構アンティークで使い勝手が良くないって、クラスメイトがぼやいていたけど、どう?」
「気に入っている」

 確かに色々と不都合はある。
 でもそれを感受できるほど部屋はゆったりしていたし、その不都合を工夫するのが楽しかった。
 何より朝晩食事が付いているのが有難かった。
 簡易キッチンも付いているが、そこで料理する腕前も無かったから。

 それに両親と共に居なくて済むもの、かなり気が楽だった。

「じゃあ、今度遊びに行っても良い?」

 そう言われて、思わず奴を睨んだ。

「来るな」
「えええ〜〜〜、そう言うと行きたくなっちゃうなぁ」

 冗談じゃない。
 俺にとって居心地の良いように作った場所に、他人を入れるなんてもってのほかだった。

「来ても入れないぞ」
「ケチ〜。入れてよ〜〜」
「何でそんなに来たがる?」

 思わずイラついて冷たい言い方になっていたと思う。
 それに構わず奴は続けた。

「そりゃ、エルスの素顔が見たいからに決まっているじゃない」

 にっこりと微笑まれて、思いっきり渋面を作る。
 何をほざいているのだ、こいつは。

「大体ね、エルス前髪長すぎ。
 幾ら綺麗な金髪でも、顔が隠れたらもったいないでしょ。
 この眼鏡も邪魔だよね」

 そう言うとあっという間に眼鏡を取られる。

 ヤバい。

 取られた途端に流れ込んでくる、物理的に聞えない声、見えない姿。 
 わーん、と頭の中で響きまくる。
 久しぶりのそれらに、頭を抱える。
 飽和しそうだった。

「あれ、これ、伊達眼鏡?
 いやちょっとだけ度数入ってる?
 掛けてなくても問題ないんじゃ……」
「返せ」

 何か言っているのを遮りようやくそれだけ言う。

「エルス?そんなに怒らなくても……」
「返せと言っている!」

 そう言って取り返そうとして、失敗する。
 その時何かに気づいたように、アーサーは立ち止った。 

「というか、大丈夫か?具合悪そうだな?」
「いいから!眼鏡!」

 そう言って俺の眼鏡を持っている手をようやくつかんだ。
 そうして長めの前髪越しに睨みつける。
 奴はびっくりしたような顔をしていた。

 その時。
 不意にチューニングがあった。
 そいつのエネルギーコードの情報が読み取れた。
 そして違和感に気づいた、気付いてしまった。

「……、アーサー、お前、ツインコードが、ない……?」

 思わず口走ったそのセリフを聞いて、アーサーの顔色が変わった。
 真剣な、真面目な、驚いている顔だった。

「エルス、お前何を」
「………裸眼だと、通常見えないエネルギーやオーラ、精霊・妖精、そういったものが嫌でも見えるし、音や声が聞こえるんだ。
 だから普段はリミッターとして、眼鏡をしてる。
 そうすれば大半のものは遮断できる。
 返してくれ」

 そう言うとアーサーは黙って眼鏡を返してくれた。
 それを黙って掛ける。

「……ごめんなさい、すまなかった」

 ようやくそれだけ言う。
 たぶんこれは、アーサーにとって他人に知られたくなかったモノだ。
 自分が見ることで、こいつの傷を暴くつもりはなかったのだが。
 嫌でも目線が下に行く。

 何度同じことをやっても慣れることが無い。
 見えることで伝えることで、誰かを不意に傷つけてしまう。
 隠しておきたい事を、暴いてしまう。
 それによって俺は両親から敬遠されていた。
 だから家に居たくなかった。
 出来るだけ早く自立したくて、飛び級もした。

 ぽん、と頭に手を置かれた。
 顔をあげるとアーサーが苦笑していた。

「ま、見えちゃったもんは仕方ないな。
 エルスも見たくて見た訳じゃないんだろ?」

 そのセリフに黙って頷く。

「取りあえず、寮まで送るよ。歩こう」

 そう言って促されて、歩きだす。
 さっきとは違い、重い足取りになる。

「うん、そうだよ。
 俺、前世でツインにツインコード切られたんだ。
 どうしてもやらないといけない役割があるからって、あっさりと」

 そう淡々と明るく話す内容に何と言っていいのか分からず、黙って聞いていた。

「でも俺、どうしても諦めきれないんだ。
 あいつじゃなきゃダメなんだ。
 だからまた会うんじゃないかと思って、あっちこっち顔を出して繋ぎを作っているんだ。
 何処かで巡り合うんじゃないかって」

 一度そこで言葉を斬った。

「そうやって探しているんだ」

 言いたい事は分かった。
 そうだ、一人で探すしかないんだ。
 例えほとんど感知できなくなっても、何処に居るか分からなくても。
 諦めることなんてできない。
 ただ、探すしかないんだ。
 どうすればいいか分からなくても、とにかく信じていくしかないんだ。

「寂しいのか?」

 ふと、気になって聞いてみる。
 するとキョトンとした顔をした。
 そしてふっと苦笑を浮かべる。

「うん、寂しい時はあるね。
 誰かを無償に求めなくてはいけない時とか。
 でも誰かと一緒に居ても、寂しくないのはその時だけで、後はもっと寂しくなるかな。
 それでも一時だけでも、誰かと一緒に居たいと思うのはおかしいことかな?」
「おかしくない、と思う。
 お前の場合やり過ぎだけど」

 暗に遊び人のことを指摘してやる。

「ははははは、そうかもな」

 そう言ってにこやかに笑うそいつは十分に強く見えた。
 寂しいと言っても、誰かを求めることのできる強さ。
 少しだけ羨ましいとも思った。

「じゃあ、また明日な」

 寮の前で、アーサーはそう言って帰って行った。
 俺は少しさびしい気持ちで部屋に入った。

Dark Age 9 出会い2

 残念ながら、また会うことはないだろうという予測に反して、奴は翌日また姿を現した。
 しかも今度は講義室移動中の廊下を歩いている真正面から来た。

「よお、また会ったな。偶然とはいえ、これも運命の出会いかな」

 そうやって声をかけてきたのは、青みがかった銀髪に明るい空の色の瞳の奴だった。
 わりと整った風貌で、女受けはもとより、それなりに男にも受けそうだった。
 とはいえ中性的な訳でなく、男らしい感じ。
 体格もわりとよく、身長は俺より高い。
 最初、思わず顔を見上げて、怪訝な顔をしてしまった。

「あれ?覚えてない?
 昨日ロッカールームで声かけたでしょ」

 言われて、更に声を聞いて思い出した。
 思わず渋面を作る。
 そのまま視線をずらし、その横を通り抜けようとした。
 だがそいつは方向転換して、俺の隣を歩き始めた。

「正面から見てもやっぱり綺麗だな。なあ、ちょっとくらいお茶しない?」

 その軽い言い方に、誘い慣れた響きがあった。
 それを無視して、黙々と足早に歩く。
 こんなところで言い合っていては、次の授業に遅れる。
 必須科目以外の授業の取り方に失敗して、移動にかなり距離があるのだ。

「ねえ、ちょっとくらい話してくれても良いんじゃない?」

 困ったような響きで、そいつはこちらが無視するのも構わず声をかけてくる。

「知らない奴に何を話せと?」

 思わず冷笑と冷たい口調でそう言ってやる。
 ついでに眼鏡越しにちらりとそいつを見る。

「確かに自己紹介して無かったねぇ。
 俺は●●学部2回生のアーシェリー・レリック。
 アーサーと呼んでくれればいいよ」

 そいつは俺の態度を丸っきり気にせず、自己紹介をしてきた。
 そのことのに呆れる。

「で、君は?」
「…………」

 聞かれて困惑する。
 こちらはあまり知り合いになりたいとは思わなかったからだ。
 そのまま黙っていると、そいつが口を開いた。

「なかなか連れないねぇ、エルシフォン・マーべリック君?」

 いきなり名前を呼ばれ、思わずそいつを見る。

「あ、こっち見てくれた」

 そいつ、アーサーはそう言うと嬉しそうに破顔した。

「名前、何で…」
「ふふん、俺の愛の力だよ」

 冗談を言うそいつに冷ややかに睨みつける。

「というのは冗談で。ロッカー番号から名前を調べた」

 話を聞いて思わずそれは違法行為じゃないかと頭を抱えそうになる。
 
「あ、何もやましいことはしてないぞ。ただ単に事務局の女性に、ついでに聞いただけだぞ」

 必死に言い訳をするそいつに冷ややかな視線を向ける。
 つまり事務局の女性に声をかけたのか。
 こいつの話し方からすると、本当に気に入った相手には速攻で声を変えていそうだった。

 足が止まったのを見て、そいつは更に言ってくる。

「ね、授業が終わってからでいいから、お茶しない?」

 人懐っこいそれは大抵の奴は、まあそれくらいなら、と思うものだろう。
 でも俺はそんな気にはまるっきりなれなかった。

「他を当たれ」

 それだけ言うと、講義室の扉を開けて中に入る。
 同時に講義開始の合図が鳴った。

「そう、じゃあ、またね」

 後ろ手に扉を閉める寸前、そんな声を掛けられた。
 そのことに溜息をつきそうになる。

 そうしてこの時から、奴は何かにつけて俺の周りに現われるようになった。

 だからと言って俺に会うために無理して来ているのではないのは、見ているうちに分かった。
 どうも奴と俺とは行動範囲が重なっているようだった。
 廊下、食堂、学内カフェなど、見たら声をかけてくる、というのが奴のやり方だった。

 もちろん、俺を見つけて声を掛けるまでに、女の子には必ずと言っていいほど声をかけ、また声を掛けられていた。

 俺に声をかける時も、俺が級友達と居る時はそんなにしつこくすることはない。
 普通に挨拶程度のものしかない。

 一人でいると側に寄ってきて、一通り誘いのかかるが、だからと言ってねちっこく嫌になるものでもない。
 だからその内、そいつが声をかけてくるのが当たり前になりつつあった。


「エルス、一人か?前、空いてるよな、いいよな?」

 俺が食堂で一人で飯を食っていた時にそいつは空いていた俺の前に、トレーを持って座った。
 俺が何か言う間も無かった。
 でもそれが嫌な感じも無かったので、そのまま無視して俺は飯を食べた。

「相変わらずだねぇ。まあ、それがエルスの良いところだよな」

 そう言ってそいつはご飯を食べ始めた。
 同時に俺が何も聞かないのに色々と話し始める。
 これもいつものことだった。

 その話を聞いてるうちにこいつが本当に遊び人なのは、良く分かった。
 誰と飲みに行ったとか、誰に声を掛けられたとか、誰と寝たとか。
 男女構わず本当に、良いと思った奴とやっているのは、それまでの話でもよく分かっていた。
 だが、それでも誰にも恨まれずに居るのは、やっぱり何かあるんだろうな。

 ぼんやりそんな事を考えながら、そいつの話を聞くとも言えずに飯を食っていた。
 そして不意に話が途切れた。
 不思議に思って顔をあげると、近くに女の子が立っていた。

 その子は決死の覚悟でそいつの声をかけたようだった。

『席外したほうがいいか?』

 目線でそう聞くと、

『いや、居てくれた方が有難い』

 とやはり目線で言ってきた。

「何か用?」

 そいつは彼女ににこやかに、でも冷ややかに声をかけた。
 その口調に思わず驚く。
 こいつがそんなに冷たい声を出すとは思っても似みなかったのだ。

 彼女はこちらを気にかけているようだったが、俺が無視して飯を食っているのを見ると、覚悟してそいつに向って言った。

「あの、私、貴方のことが好きです。
 ですから、お付き合いして下さいっ!」

 真っ赤になって一気にそういった彼女を、アーサーは冷ややかに見ていた。

「ごめんねぇ、悪いけど俺、君とは付き合えないや。
 気持ちは嬉しんだけど、悪いね」

 アーサーは口調は一見いつも通り、でも取りつく島のないくらいハッキリと断った。
 そのことに更に驚く。

 彼女は断られるとは思ってなかったのかもしれない。
 しばらくポカンとして、どうしていいか分からないようだった。

「あの、でも」
「残念だけど、俺の好みじゃないから」
「お、お友達の一人でも、良いんですっ」

 なんとか食い下がろうとするその子に対して、更に奴は冷ややかに言う。

「でも君は、俺が他の沢山の人と付き合うのは、耐えられないでしょ?
 俺は誰か一人の人には決められないよ。
 だから君とは付き合えません」

 そう言いきると、奴は彼女から視線を外した。
 彼女は踵を返して、そこから離れて行った。
 泣いていたかもしれない。

「意外だな」

 その子の姿が見えなくなってから、俺はそういった。

「何が?」
「来るもの拒まず、だと思っていたからさ。
 振るとは思わなかった。
 あんな真面目な一途なこの、何が不満なのさ?」
「真面目で一途だからだよ。
 俺みたいな遊び人には勿体ないでしょ?
 そもそも俺にはツインが居るしね」

 その答えにも驚く。

「ツインが居るなら、尚更遊ぶの止めたらどうだ?」
「でもまだ再会ってないしねぇ……」

 そう言って苦笑するそいつに思わず黙る。
 ツインが居る、と覚えていても今この世界の何処に居るか知らないのでは意味が無い。
 そして、居ないと分かっていても……。

 思わず胸の痛みがぶり返しそうになって、残りの飯をかきこんだ。

「それよりさ、エルス、今晩暇なら晩飯食べに行かない?
 良い場所い知っているんだけど、どう?」

 いつもの口調に戻ってそいつは俺に誘いをかける。
 この流れで、何処をどうしたらそう言う話になるか、毎度俺は理解に苦しむ。

「悪いが今夜は飲み会だ」

 そう言って断る。
 クラスメイト達とその友人知人が集まってのモノだ。
 もっとも俺は未成年だから、酒は飲めないのだが。

「あ、そーか、そうだった。魔法学部の基礎クラスのだよな?
 俺も誘われているんだった。
 じゃあ、俺もそっちに行こうかなぁ」

 その話を聞いて少し嫌な気持ちになる。

「勝手にしろ」

 そう言うと荷物と食べ終わったトレーを持って、返却口に返しに行く。
 そのまま学食を出た。

Dark Age 8 出会い1

「君、綺麗だねぇ」

 ロッカールームで教科書の出し入れをしていると、そう声をかけてきた奴が居た。
 声からして男(同性)だった。

「ねぇねぇ、良かったらお茶でもしない?奢るから」

 そう続けざまに言ってくる。
 俺はそれを無視してロッカーを閉じた。
 施錠と魔法鍵を設定する。

 学生用ロッカーといえども、セキュリティの関係でちゃんとカギなどはしっかりしたものが用意されていた。
 とはいえ、個別に施錠コードを設定するシステムだ。
 施錠コードを見られたら、意味が無い。
 
 そのまま声の主を見向きもせずに、そこを離れる。

「あれ?無視しちゃうの?こんなにいい男なのに」

 後ろから掛けられた声に、思わず脱力しかかる。
 自分で自分の事を言い男なんて言う馬鹿が、本当にいるとは思ってもみなかった。
 それを堪えて歩き続ける。

「じゃあ、またな〜」

 そう更に声がした。
 また何てあるものか。
 たまたま居合わせただけの奴に、また会うとは思わなかった。

 ドン、とぶつかるように側に来たやつが居た。

「相変わらず持てるなぁ、エルスは」

 クラスメイトの奴だった。
 高等学校から一緒に飛び級したそいつは、ニヤニヤ笑っていた。
 
「迷惑」

 一言でそう言う。
 今までも何度も同性異性にかかわらず、声は掛けられていた。
 興味が向いた時以外は基本無視をしてきた。

「確かに同性に言い寄られても、迷惑っちゃー迷惑だな。
 でも相手も結構男女問わずモテそうな奴だったなぁ」
「ふうん、そうだったんだ?」

 思い出すように言われて、おや、と思った。
 その時同じクラスの奴が、口を出した。

「さすがエルスには、学校一の色男も声をかけたか」
「なんだ、それ?」

 思わず聞き咎める。

「アイツ、有名だよ。
 一つ学年上だったかな。
 男女問わずに声かけて、遊んでるやつだって。
 気をつけろ、ってサークルの先輩から忠告された」
「お前が?」
「俺じゃなくて、一緒に居るエルスが結構気に入られそうだからって」
「そりゃそーだ。お前の様なむさい奴には、さすがに声はかけんだろう」

 友人達の突っ込みに、言い返したのを更にからかわれる。
 わはははは、と笑う周りの奴に軽く苦笑して見せる。

「まあ、エルスは大丈夫だと思うけどな」
「そうそう、こいつは真面目だから、そんな奴に引っ掛かりっこない」
「でも万一ってこともある」
「まあ、気をつけるよ、ありがとう。
 でも顔見てないから、気をつけようがないな」

 そう言ったら友人達に驚かれた。

「見てないって、声かけられて?」
「横からだったし」
「いや、それでも普通、声がする方見るだろ?」
「無理無理、エルスはそういう軽い奴は基本無視するのが癖だし、恋愛に興味が無い珍しい奴だから」

 周りが唖然としたところで、高等学校以来の友人がフォローを入れる。

「まあ、そう言う訳だよ」

 それに乗じてそう言って苦笑する。

「……まあ、でも、奴が一度無視された奴に、何度も声を変えるとは限らないしな」
「けどあいつは女には挨拶代りにナンパするって聞いたぞ」
「俺は女じゃない」

 友人達の心配をよそにそう言ってやる。

「偶々、偶然近くに居たから声をかけただけだろ。また会うとは限らん」
「確かにな」

 そうやって話しながら歩いていて、講義室に着いた。
 ちょうど始業の合図が鳴る。
 俺達はそのまま講義室に入って、その話はそこで終りになった。
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なに見え遠足三期生です。
参加した後に起こった色々な「上」及びその関連のことを書いてます。
妄想かもしれないこの話、楽しんで頂けるとありがたいです。

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